農薬:防除学習帖
みどり戦略に対応した防除戦略(27) 摘果期の病害防除【防除学習帖】 第233回2024年1月20日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にKPIをクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上で、みどりの食料システム法のKPIをクリアできる方法がないかを探ろうとしている。
現在、散布回数の多い果樹を検討するためナシを題材に検討を進めている。果樹も水稲と同様に防除暦が整っている作物ではあるが、暦の内容が地域によって異なるため、一律的なリスク低減方策を示しにくい作物であることから、栽培ステージごとに一般的なリスク換算量低減方法の検討を試みようとしている。
今回は、梅雨期の病害防除について検証してみる。
1.梅雨期に発生する病害
この時期に発生が多くなる主な病害は、雨が多いと伝染が拡大する病害であり、ナシでは黒星病、輪紋病や炭疽病が該当する。梅雨期の防除の基本は、降雨前の予防散布であるので、毎年の発生するような園地では特に防除暦に従って確実に散布を行う必要がある。
2.梅雨期の防除の実際
以下にモデル防除暦を示したが、この時期に発生する病害は、雨をきっかけに感染が拡大し、特に果実への被害が大きくなる。満足な収穫を得るためにも、基本的にリスク換算量を気にすることなく、防除暦に従って確実に防除を行ってほしい。
3.リスク換算量削減方策
この時期も基本的に地域の防除暦に従って確実に実行すると良い。なぜなら、防除暦にはその地域における病害の発生消長を把握した上で、適切な殺菌剤が記載されているからである。
もし、新発生の病害や薬剤耐性菌の発達などイレギュラーな対応が必要な場合は、指導機関等の指導を確実に守るようにしてほしい。
また、この時期も被害を防ぐ重要な時期であるため、基本的に防除効果を最優先に考えて防除を行って欲しいが、あえてリスク換算量を減らすなら次のような方法が考えられる。
(1)薬剤防除
- 作用性の異なる薬剤の中からリスク換算量の少ないものを選んでローテーションで使用する。
- 希釈倍数が複数ある場合は薄い方でも十分に効果があると判断される場合に限り選択する。
- 1剤で複数の病害に効果のある薬剤を基本防除に組み入れる。
(2)耕種的防除
摘果作業で、病原菌が侵入したことが疑われる幼果を確実に取り除くようにする。
また、袋掛けなど物理的防除を併用するとよりリスク換算量を減らすことができる。
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