農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(28)【防除学習帖】第267回2024年9月28日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。IPM防除は、①化学的防除、②生物的防除、③物理的防除、④耕種的防除の4つの防除法を効率よく組み合わせて、作物の生産圃場を病害虫雑草が生きていきづらい環境、いわゆる病害虫雑草自身の生命活動を維持しにくい環境にすることで効率的に防除効果を発揮しようというものだ。
このため、病原菌種別や害虫種別、雑草種別に使えるIPM技術を整理すると、作物が異なっても応用しやすくなるので、現在、病害虫雑草別に主として化学的防除を除いたIPM防除法の組み立て方を検討している(化学的防除法の詳細については病害虫別に後日整理する)。
現在害虫別にその生態と防除について紹介しており、今回はカメムシ目を紹介する。
1. 目の種類と生態・被害
カメムシ目は節足動物門、昆虫網に属し、非常に多くの種類がある。農林害虫に挙げられているものに限ると43の科があるが、そのうち主な防除対象とされているのが11科23害虫である(下表)。
ひとことでカメムシ目といっても、その形態は多様性に富み、生活の仕方や体の構造はその群によって大きく異なる。例えば、アブラムシでは、翅を持たない事も多く、単為生殖による繁殖を含む、複雑な生活環を発達させていたり、カイガラムシのように足や体節構造までも失って、とても昆虫とは思えない形のものもある。
カメムシ目の共通する特徴は、口器が細長くなり、左右が重なり合うような針状であることである。その口器は、チョウ目のように口器全体を巻き込むことはせず、頭部から腹部にかけての腹側の中心線に沿って納められているのが一般的である。
この細長い針状の口器(口針)を作物の細胞内に差し込み、内容物を吸汁するが、その吸汁痕が傷となり、そこに腐生性の菌などが入り込むなどして斑点や傷跡となり、作物の品質を著しく落とし、収量を低下させる被害を起こす。
2.カメムシ目の防除対策
カメムシ目は種類が多いため、化学的防除以外の特に生物的防除は種特異性があって対象となる害虫個体が異なることが多いので、どの種に効く資材かをよく確かめて実施するように注意してほしい。
(1)殺虫剤の使用 [化学的防除]
カメムシ目は、飛翔性が高いのであらゆるところから飛翔して侵入する。耕種的防除を併用して侵入個体を減らしながら、化学的防除を害虫の発生前に行うのが最も効果が高い防除法である。カメムシ目は一度侵入すると必ず加害痕が残るので殺虫剤は極力予防的に使用する。
(2)雑草防除[耕種的防除]
カメムシ目には色々な食性があって、好みの植物が異なる。圃場回りの雑草に好みの植物があるとそれを一次の住処として、その後圃場に侵入することがあるので、圃場の周りの雑草きれいに刈取ってカメムシ目の居場所を無くすようにする。
(3)捕殺[物理的防除]
加害虫を見つけたら、捕殺する。
(4)生物農薬の利用[生物的防除]
カメムシ目害虫では、アブラムシ類とコナジラミ類に天敵昆虫および天敵微生物を有効成分とする生物農薬が登録されている。以下の表にその商品名と種類名(有効天敵名)、対象害虫を整理したので参考にしてほしい。なお、いずれも野菜類(施設栽培)で登録取得している生物農薬が多いが、一部には作物が限られるものもあるので、購入前によく適用作物、使用方法確認の上、正しく使用てほしい。
また、近年では、ナス栽培などでタバコカスミカメ(在来天敵)を温存植物(クレオメ、スカエボラ、ゴマ、バーベナ)とともに植栽してアブラムシ類やコナジラミ類防除に活用されている例もある。
(5)防虫ネットの設置[物理的防除]
施設栽培の場合、入口、側窓、天窓に防虫網を設置することで成虫の侵入を防ぐことができる。
どの害虫を防ぐかは、害虫の体長によって判断するが、コナジラミ類は微小な網目が必要なので、通気性も考慮して導入を検討する。
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