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農薬:防除学習帖

みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(50)【防除学習帖】第289回2025年3月15日

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 令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。

 みどり戦略対策に向けたIPM防除でも、必要な場面では化学的防除を使用し、化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせて防除効果の最大化を狙うのだが、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できるようにするためには、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理すると、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道が探れると考えている。そのため、有効成分の作用機構ごとに分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。

 本稿281号で紹介したジフルメトリム(FRACコード[39])に始まり前回のアメトクトラジン(FRACコード[45])までで病原菌の呼吸に作用する有効成分の紹介を終えたが、呼吸阻害剤の作用性を理解する上で、呼吸のメカニズムを知っておくと、より理解が進むので少し整理しておこうと思う。本来は呼吸阻害の冒頭で紹介すべきだったが順序が逆になってしまったことをお詫びする。

 1.呼吸とは
 呼吸とは、生物の体内に取り込んだ有機物(グルコースなど)を酸化の過程を経て、生命活動のためのエネルギー供給物質となるATP(アデノシン三リン酸)を合成する過程をいう。

 病原菌の細胞内で起こる呼吸は、①解糖系、②クエン酸回路、③電子伝達系といった順番で行われ、ブドウ糖1分子がこの過程を経ることで、①解糖系でATPが2分子、②クエン酸回路でATPが2分子、③電子伝達系によってATPが34分子つくられ、作られた合計38個のATPがエネルギーとして活用される。

 このように、エネルギー(ATP)の合成は全体の約9割が③の電子伝達系で行われており、この電子伝達系の働きを阻害されると、作られるエネルギーが90%も減ることになり、阻害された病原菌は利用できるATPが大幅に減って、エネルギー飢餓に陥ることで正常な生命活動ができなくなり最終的には死滅する。前回までに紹介したFRACコード39、7、11、11A、21、29、45に属する有効成分群はいずれも③の電子伝達系内のどこかの過程を阻害することで効果を発揮している。
 
 2.ATP生成の過程
(1)①解糖系
   解糖系はその名のとおり、有機物であるブドウ糖(グルコース)を酵素の働きでピルビン酸を経てア セチルコチンコリンAを生成する過程のことをいい、ATP2分子とNADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド還元型)4分子を生成する。ピルビン酸は酵素の力でオキサロ酢酸に変換されて後の②クエン酸回路で使われ、NADHは後の③電子伝達系でATP生合成のために必要な電子伝達の役割を果たす。

 (2)②クエン酸回路
 ①の解糖系で生成されたアセチルコリンAは、オキサロ酢酸と融合してクエン酸を生成し、クエン酸2分子はクエン酸回路によって生合成され、ATP2分子とNADH6分子、FADH2(フラビンアデニンジヌクレオチド還元型)2分子、CO2(二酸化炭素)4分子が生成される。
 クエン酸回路では、各種酵素などの働きで様々生合成反応が行われ、回路の途中でコハク酸やフマル酸、オキサロ酢酸などを経由して、再びアセチルコリンAと融合してクエン酸を生成することを繰り返している。

 (3)③電子伝達系
   ①解糖系と②クエン酸回路でできたNADH10分子とFADH22分子を出発物資として、これらがミトコンドリア内膜に存在する4つの酵素複合体を通過する際に最終的にATPが34分子生成される。この際に酸素が消費される。
  1)複合体Ⅰ
    複合体Ⅰは電子伝達系の出発点であり、NADH-ユビキノン酸化還元酵素が機能してNADHを酸化し、ユビキノンを還元する。その際にミトコンドリア内膜を隔てて水素イオンを膜間腔側に輸送する。
  2)複合体Ⅱ
    複合体Ⅱは、コハク酸脱水素酵素であり、コハク酸をフマル酸に酸化してユビキノンを酸化する。この際に、コハク酸からユビキノンへ電子が渡される。ここでは、水素イオンの輸送は発生しない。
  3)複合体Ⅲ
   複合体Ⅲはユビキノン-シトクロムc酸化還元酵素であり、ユビキノールを酸化するQo部位とユビキノンを還元するQi部位とがある。この一連の働きによって、ユビキノンを介して水素イオンを膜間腔側に輸送する。
  4)複合体Ⅳ
   複合体Ⅳは、シトクロムc酸化還元酵素であり、シトクロムcを酸化して得た電子で酸素を還元して水を生成し、その際にミトコンドリア内膜を隔てて水素イオンを膜間腔側に輸送する。
  5)水素イオンの輸送
   複合体Ⅰ~Ⅳの働きにより、①解糖系と②クエン酸回路でできたNADH10分子とFADH22分子から合計112個の水素イオンがミトコンドリア内膜を隔てて膜間腔側に輸送される。
  6)ATP合成
   ミトコンドリア内膜に存在するATP合成酵素がミトコンドリア膜間腔側に蓄積された水素イオンの濃度勾配を駆動力にして、細胞中に存在するADP(アデノシン二リン酸)とPi(オルトリン酸)を原料にしてATPを合成する。このATP合成酵素が、ミトコンドリア膜間腔側に蓄積された水素イオンの濃度勾配を利用することを酸化的リン酸化の共役という。
 
 3.呼吸阻害剤の作用点
  呼吸阻害剤は、ATP生成の過程(呼吸鎖)の中の電子伝達系のいずれかの部位を阻害し、ATP合成をできなくする。その作用する部分は有効成分ごとに異なるが、どこを遮断されても呼吸鎖が機能しなくなりATP(エネルギー)を生成できなくなって病原菌は死滅する。
  呼吸鎖の電子伝達系に作用する有効成分と作用部位は以下のとおり。
 (1)複合体Ⅰ NADH酸化還元酵素に作用する有効成分
   この作用を示すものは、FRACコード[39]に属するジフルメトリム(ピリカット)とトルフェンピラド(ハチハチ)があり、NADHの酸化とユビキノンの還元する働きをするNADH酸化還元酵素に作用して、同酵素の働きを阻害する。
 (2)複合体Ⅱ コハク酸脱水素酵素に作用する有効成分
  この作用を示すものはFRACコード[7]に属するSDHI殺菌剤があり、コハク酸脱水酵素の働きを阻害する。このグループに属する有効成分には、フルトラニル(モンカット)、メプロニル(バシタック)、イソフェタミド(ケンジャ)、フルオピラム(オルフィン)、チフルザミド(グレータム)、フルキサピロリド(イントレックス)、フラメトピル(リンバー)、インピルフルキサム(カナメ、ミリオネア、モンガレス)、イソピラザム(ネクスター)、ペンフルフェン(エバーゴル)、ペンチオピラド(アフェット、フルーツセイバー)、ピジフルメトフェン(ミラビス)、ボスカリド(カンタス)、ピラジフルミド(パレード)といったものがある。
 (3)複合体Ⅲに作用する有効成分
  同じ複合体Ⅲに作用するものでも、複合体Ⅲのどの部位に作用するかによって有効成分が異なる。
  1)複合体Ⅲのユビキノール酸化酵素のQo部位に作用するもの
  この作用を示すものは、FRACコード[11、11A]のQoI殺菌剤があり、ユビキノール酸化酵素の働きを阻害する。このグループに属する有効成分には、アゾキシストロビン(アミスター)、ピコキシストロビン(メジャー)、マンデストロビン(スクレア)、ピラクロストロビン(ナリア・シグナムの1成分)、クレソキシムメチル(ストロビー)、トリフロキシストロビン(フリント)、メトミノストロビン(オリブライト、イモチエース)、ファモキサドン(ホライズンの1成分)、フルオキサストロビン(ディスアーム)、ピリベンカルブ(ファンタジスタ)、メチルテトラプロール(ムケツ)がある。
  2)複合体Ⅲのユビキノン還元酵素のQi部位に作用するもの
 この作用を示すものは、FRACコード[21]のQiI殺菌剤であり、ユビキノン還元酵素の働きを阻害する。このグループに属する有効成分には、シアゾファミド(ランマン)、アミスルブロム(ライメイ、オラクル)がある。
  3)複合体Ⅲのユビキノン還元酵素のQo部位のスチグマテリ結合サブサイトに作用するもの
 この作用を示すものは、FRACコード[45]のQoSI殺菌剤であり、ユビキノン還元酵素の働きを阻害する。このグループに属する有効成分にはアメトクトラジン(ザンプロ)がある。
  4)ATP合成酵素の働きを阻害するもの
   ATP合成酵素は、ミトコンドリア内膜にできた水素イオンの濃度勾配を利用してATPを生合成するが、FRACコード[29]に属するフルアジナム(フロンサイド)は、ATP合成酵素に直接作用するのではなく、酸化的リン酸化の共役の邪魔をして、同酵素が利用するはずの水素イオンを利用させなくしてATP合成を妨げるというユニークな作用を示す。
 
 4.まとめ
 以上のように、呼吸という生命活動をひも解きながら、その生命活動のどこに有効成分が作用して効果を示すのかを整理してみた。これまで整理したことからもわかるように、同じ複合体に作用するグループでも、複合体のどの部位に作用するかで効果を示す病原菌種が異なっているので、あらかじめ効果のある菌種は把握しておいた方がよいだろう。

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