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農薬:防除学習帖

みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(51)【防除学習帖】第290回2025年3月22日

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 令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。

 みどり戦略対策に向けたIPM防除でも、必要な場面では化学的防除を使用し、化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせて防除効果の最大化を狙うのだが、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できるようにするためには、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理すると、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道が探れると考えている。そのため、有効成分の作用機構ごとに分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。

18.アニリノピリミジン殺菌剤(AP殺菌剤)

 (1)作用機構:[D]アミノ酸およびタンパク質生合成

 (2)作用点: メチオニン生合成(提案中)

 (3)グループ名:アニリノピリミジン殺菌剤(AP殺菌剤)[グループコード:9]

 (4)殺菌剤の耐性リスク:中

 (5)耐性菌の発生状況:灰色かび病菌と黒星病菌で発生

 (6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):

  [1]アニリノピリミジン/シプロジニル(ユニックス)
  [2]アニリノピリミジン/メパニピリム(フルピカ)
 (7)グループの特性:

このグループ[9]は、病原菌が生命活動を行う際に必要なアミノ酸やタンパク質の生合成を阻害する作用機構を示し、作用点は、病原菌が生命活動を行う際に重要なアミノ酸であるメチオニンの生合成を阻害する(提案中)。これによって、細胞壁分解酵素の分泌を阻害して病原菌が植物体内に侵入を防いだり、胞子の発芽管の伸長や付着器の形成を阻害して、病原菌の作物への感染を阻害する。主として、子のう菌類や将来子のう菌類に分類されると想定される不完全菌に高い効果を示す。このグループの耐性菌発生リスクは中とされており、既に灰色かび病菌と黒星病菌で耐性菌が報告されている。
 (8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
     このグループに属するシプロジニル、メパニピリムともにリスク換算係数0.316であり、その基準年出荷量は、それぞれ12.5トンと2トンである。灰色かび病や黒星病に耐性菌が発生してはいるが、重要病害が多い子のう菌類防除剤として貴重なグループであるため、耐性菌対策に留意しながら、ローテーション防除の1剤として使用する方が得策と考えられる。

みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(51)【防除学習帖】第290回

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