農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(52)【防除学習帖】第291回2025年3月29日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。
みどり戦略対策に向けたIPM防除でも、必要な場面では化学的防除を使用し、化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせて防除効果の最大化を狙うのだが、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できるようにするためには、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理すると、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道が探れると考えている。そのため、有効成分の作用機構ごとに分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
19.ヘキソピラノシル抗生物質
(1)作用機構:[D]アミノ酸およびタンパク質生合成
(2)作用点: タンパク質生合成(リボソーム翻訳開始段階)
(3)グループ名:ヘキソピラノシル抗生物質[グループコード:24]
(4)殺菌剤の耐性リスク:中
(5)耐性菌の発生状況:イネいもち病菌とイネ籾枯細菌病菌で発生
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
[1]ヘキソピラノシル抗生物質/カスガマイシン(カスミン)
(7)グループの特性:
このグループ[24]は、病原菌が生命活動を行う際に必要なタンパク質の生合成を阻害する作用機構を示し、作用点は、病原菌が細胞分裂する開始する際の遺伝子翻訳を阻害する。これによって、正常の細胞分裂ができなくなって、胞子の発芽管や菌糸の伸長や付着器の形成など病原菌の生命活動全般をできなくさせて死滅させる。浸透移行性を有しており、予防効果と治療効果を合わせもつ。主として、糸状菌ではイネいもち病、その他多くの細菌病に効果を示す。
このグループの耐性菌発生リスクは中とされており、既にイネいもち病菌とイネ籾枯細菌病で耐性菌の発生が報告されている。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
このグループに属するカスガマイシンのリスク換算係数は0.316であり、その基準年出荷量は、19.8トンである。耐性菌の発生はイネ分野に限られ、園芸場面では貴重な細菌病防除剤として貴重な存在であり、園芸場面では耐性菌対策と効果の増強を図るため無機銅との混合剤が主流であることから削減しなくても良い薬剤であると考えられる。
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