【惣菜市場】食の外部化進み市場拡大2014年9月1日
・10年間で2割以伸びる
・各業態で高まるウェイト
・CVSでは米飯類が6割も
・スーパーでは一般惣菜が
・「家庭では作りづらい」ものを
・食の外部化率が75%時代に
人口の減少と高齢化など社会環境の変化、そして健康、安全・安心、栄養バランスなど高まる食への関心、その一方で家事の簡便化・時間短縮ニーズ、さらに核家族化による家庭内での調理技術の伝承の希薄化が進み、食の外部化率が2008年以降、44?45%台で推移しているが(※2)、そのなかで惣菜市場(※1)は着実に伸長している。惣菜業界唯一の資料として毎年発行され、10年目を向かえた(一社)日本惣菜協会の「惣菜白書」(2014年版)をもとに、伸長する惣菜市場の現状を探ってみた。
◆10年間で2割以伸びる
10年前の2003年の惣菜市場規模は6兆9684億円だったが、10年経った12年は8兆5137億円と22%伸長し、13年の見込みは8兆7142億円で12年比2.4%増と堅調に伸びている(表1)。しかし、この間、食市場全体は01年の72兆3116億円から12年の65兆円規模へ年々縮小している(※2)。
表1では、業態別の惣菜売上高の推移を示しているが、百貨店を除いて売上規模が拡大していることが分かる。
◆各業態で高まるウェイト
百貨店協会によれば、08年に7兆3800億円あった百貨店の売上げは13年には6兆2000億円台にまで低下したが、食料品の割合は13年で27.9%と比率が高くなっており、食料品に占める惣菜の割合も20?21%台で推移しているという。
また日本チェーンストア協会によれば、03年の売上高14兆4000億円台から13年には12兆7000億円台へと減少しているが、売上高に占める食料品の割合は、03年の56.5%から13年の62.5%へと高まり、惣菜の割合も10.2%から10.9%へと上昇し、その重要性が増している。
百貨店やスーパーの売上高が減少するなか、コンビニエンスストア(CVS)は、店舗数が5万店を超え、売上高が03年の7兆円強から13年には9兆8724億円と10兆円台に手が届く勢いで、今日の小売業界を牽引している。
CVSの売上げに占める惣菜を含めたFF(ファストフード)・日配品の割合は35%前後とCVSの最重要カテゴリーとなっている。
(写真)
「普段のおかず」として食卓に
◆CVSでは米飯類が6割も
表2は惣菜のカテゴリー別業態別売上高をまとめたものだが、表の「合計A」欄のように、弁当・おにぎり・寿司などの「米飯類」が全体の47%を占め、和・洋・中華惣菜や煮物、焼き物、揚げ物といった「一般惣菜」が43.6%で、この2つのカテゴリーで惣菜の90%以上を占めている。
「米飯類」は、CVSが36.2%、専門店他が34%、次いで食品スーパー21.9%とこの3者で90%超となっている。サンドウィッチなど「調理パン」は72%がCVSで、調理済み焼きそば、うどん、そば、スパゲッティなど「調理麺」はCVSと食品スーパーで85%が買われている。「一般惣菜」は、専門店他が47.9%、食品スーパーが28.2%とこの2者で75%占めている。
表1や表2「合計B」で分かるように、業態別のシェアは、専門店他が37.4%ともっとも高く、次いでCVS27.5%、食品スーパー24.3%となっている。
◆スーパーでは一般惣菜が
図1は、各業態の惣菜売上高に占める米飯類などの惣菜カテゴリーの占める割合をグラフにしたものだ。
ここで目につくのは、惣菜市場の3割近くのシェアをもつCVSで、米飯類の占める割合が62%と圧倒的に高いことだ。おにぎりや弁当など米飯類はCVSを牽引してきた重要なアイテムだということだ(※3)。
またテレビなどで話題になる「デパ地下」でも米飯類が70%近く占めていることも注目してよいのではないだろうか。
堀冨士夫日本惣菜協会会長は本紙のインタビューで、惣菜にとって「米は大事な食材だが、用途によって求める米は異なる」ので、「それぞれのニーズに合ったお米を作ってもらいたい」と要望している(※4)。
専門店、総合スーパー、食品スーパーでは一般惣菜が50%以上を占めており、図2のように「普段のおかずとして」「調理時間がない時」に利用されていることがわかる。
「惣菜白書」では今回からポテトサラダなどのサラダや肉じゃが、サバの味噌煮などの「袋物惣菜」(※5)についても調査を行っているが、12年の市場規模は2000億円弱で、業態別シェアはCVSが60.4%ともっとも高く、次いで食品スーパー17.9%となっている。今後、CVSの有力商品となる可能性は大きいのではないだろうか。
表3は首都圏と近畿圏の女性が最近半年間で購入した惣菜のベスト10の3年間分をみたものだ。
◆「家庭では作りづらい」ものを
首都圏では、弁当、おにぎりの主食が1、2位に入っているが、近畿圏では副菜のコロッケがトップとなり、これに弁当、おにぎりが続いている。また、最近ベスト10に登場する頻度が高まっているのが「野菜サラダ」というのも時代の流れだといえる。
「惣菜白書」では、消費者に「今後欲しい惣菜」について聞いているが、圧倒的な第1位が「家庭では作りづらい惣
菜」(62.3%)で、家庭での調理時間短縮や調理技術の低下、さらには利便性・簡便性を求める時代のニーズを端的に表している。ちなみに第2位は「野菜が多くふくまれた…」37.3%、第3位が「国産の食材のみを使用した…」34.3%、4位「栄養バランスのとれた…」34%、5位「添加物を使用していない…」33.3%となっている。
◆食の外部化率が75%時代に
堀会長は、「これからの時代、中食・惣菜を含めて『食の外部化』はさらに進み、2040年には75%になるという説」もある。市場出荷や大手との契約販売をしてきた「農家や農協の人たちには、面倒なことかもしれない」が、将来を見据えて「中食やその中核である惣菜を意識した農産物生産に取組んでほしい」。そのことで「その地域の農家と惣菜屋が結びつき、地域力を高めることが大事だ」と指摘する(※4)。
改めてこの言葉の意味を考えてみてはどうだろうか。
【※】
※1:「惣菜」とはそのまま食事として食べられる状態に調理されて販売されているもので、家庭、職場、屋外などに持ち帰って、調理加熱されることなく食べられる、比較的消費期限の短い調理済み食品をいう。『惣菜白書』2014年版(A4版208頁、資料データCD付)は、日本惣菜協会(03-3263-0957)が有料(会員・賛助会員・学校関係者など1万円、一般2万円〈税込〉で販売している。
※2:外食産業総合調査センターによる
※3:人口減少とマーケットの関係やCVSについては、本紙連載「いま食のマーケットは…」を参照
※4:農業協同組合新聞2014年4月30日号
※5:容器包装後低温殺菌処理され冷蔵にて1カ月程度日持ちする調理済み包装食品のこと
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