GM表示「重大な課題」 カトラー代表補2013年6月27日
米国通商代表部(USTR)のカトラー代表補がJAグループのTPP対策米国代表団との意見交換で遺伝子組み換え食品を含む食品表示制度についてTPP交渉でも「重大な課題だと思っている。テーマになるだろう」と語った。一方、米国との事前協議が終了したことを発表した4月12日、TPP政府対策本部長の甘利明経済再生担当相は、今後の日米間協議で「遺伝子組み換え作物に関しては、米側として提起する事項に含まれていないとの説明を米側より受けている」と国民に説明している。
◆TPP原則を強調
JAグループのTPP対策米国代表団にはJA全中の萬歳章会長を団長に11人が参加し6月10、11日に米国政府、議会関係者、農業団体などと意見交換した。
このうちUSTRのカトラー代表補は「すべてのTPP交渉参加国にセンシティブな品目が存在」し「国会や自民党の決議の内容は承知している」と述べたが、同時に「日本政府はすべての品目を交渉のテーブルに載せ、包括的で高い水準の合意をめざすことに合意している」と日米政府間の合意も強調した。また、JAグループの立場とUSTRが実施した意見公募(パブリックコメント)への意見提出についても「承知している」と話した。 そのほか、TPP交渉が秘密裏に行われているとの批判が米国内にあることもふまえ、USTRは議会で報告していることや、業界団体とも意見交換していると話した。
◆EUとの交渉念頭に
また、米国の関心事項として、食品表示制度や規制について「大きな課題」と話したという。遺伝子組み換え(GM)農産物については科学的に安全性が証明されていれば表示は不要というのが米国の考え。米国はTPP交渉に加え、EUと包括的環大西洋貿易投資協定(TTIP)交渉も進める。EUは日本よりも厳しく全食品がGM表示が対象となっており、交渉では関税よりもこうした規制のほうが問題となるとみられる。
JA全中の冨士重夫専務によるとカトラー代表補は日本とEUとは「認識の違い」があると言及し、GM食品表示についてはEUとの交渉を念頭に置き、TPP交渉でも「重大な課題だと思っている。交渉テーマになるでしょう」と語ったという。 日本政府にはGM表示問題は提起しないと米側は説明しているというが、米国の本音が示された。
一方で米国内では未承認のGM小麦が発見されたと報じられた。米国農務省(USDA)のカースティング海外農業局長に対して代表団は、日本の消費者に不安が広がっていることを伝えた。「調査中だが、商流に乗ったという証拠はない」と回答した。
◆コメのMA拡大を
代表団は米国農業団体とも意見交換した。 米国産米はミニマム・アクセス(MA)枠で年間35万tほど日本に輸出されている。コメ連合のワード会長らは、日本に対しMAの拡大と主食用での市場流通の拡大を主張した。ただし、関税撤廃には言及がなかった。冨士専務によればTPP交渉にはベトナムも参加しており、米国産は競争力がないとの認識があるという。
全米生乳生産者連盟のコザック会長らは、TPP交渉は完全な関税撤廃が最終目標であり、日本とカナダに輸出を拡大したいとの期待が示された。ただし、米国の酪農もNZからは攻められる立場だ。 また、米国てん菜糖連盟のジョンソン会長らとは「砂糖は日米双方にとって極めて重要な品目であることを確認した」という。
◆FTAに懐疑の声
これらの意見交換で米国もセンシティブ品目を抱えていることが改めて明らかになり、JA全中と連携をしてきた米国の家族農業者を代表するファマーズ・ユニオンとは「TPPの原則は両国の農業者の思いと必ずしも相容れるものではない」とする共同声明を発表。また、ジョンソン会長は「日本が重要品目の除外に成功すれば米国もそれに成功する確率が高くなる。統一戦線を張っていける」と話した。ジョンソン会長はNAFTAの経験から米国内で雇用が増えたのか、1%の人のみに豊かさをもたらしただけではないかと包括的貿易協定に懐疑的だという。
ただし、政府、農業団体のいずれもセンシティブ品目の存在は認めるものの「最初から除外はあり得ない。あくまで交渉の結果」との立場だという。
訪米団は今回の意見交換で「国民の多くが農産物の例外を求めたり、交渉次第で脱退しても構わないと考えていると、直接伝えることができた」と評価。広範な連携でTPP反対を続けていくとしている。
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