新たな機能性表示制度を国産農産物の需要拡大に2015年3月9日
健康への効果を食品に表示できる新たな機能性食品表示制度が4月から施行される。新制度の対象は加工食品だけでなく農林水産物も可能となることから、付加価値の向上や新たなブランド構築につながることが期待される。ただ、制度を理解し実現に向けて課題を整理することも必要になっていることから、3月5日にはJAから新制度への取り組み状況などを報告する勉強会が開かれた。
◆事業者による届出制
新たな機能性表示制度の勉強会を開いたのはNPO法人食品安全グローバルネットワークでJA全農が協賛した。JA全農の神出元一専務は新制度について「付加価値向上や新たなブランド構築による需要の掘り起こしによって生産者の所得向上につながるチャンスがある」としてこの制度を販売戦略のひとつに位置づけられないかとの考えを示した。
ただ、農産物については天候による機能性成分のばらつきや、新制度に合わせた産地から消費者までの流通の整備などの課題もあるのではと指摘した。
新制度の内容については(独)農研機構食品総合研究所の山本万里・食品機能研究領域長が解説。健康効果を表示できる制度は現在、「特定保健用食品」(トクホ)と「栄養機能食品」がある。これに新たな機能性食品表示制度が加わることになる。そのポイントは[1]加工食品だけでなく農林水産物も対象になる、[2]許可制ではなく事業者の責任による届出制、2つだ。
農産物・水産物にはいうまでもなくさまざまな栄養成分が含まれているが、今回の表示制度は、食事摂取基準に定められた栄養素や、すでに制度化されている栄養機能食品は除く。また、アルコール含有飲料、脂質、飽和脂肪酸、コレステロール、ナトリウムなど過剰摂取につながるものも対象外だ。
そのうえで対象となるのが、各種のアミノ酸、ペプチド類などのタンパク質、α-リノレン酸などの不飽和脂肪酸や食物繊維、ビタミンA(β-カロテン、β-クリプトキサンチンなど)などだという。
これらがどのような機能を持つのかついては、評価の定まった機関による分析や、科学的根拠を示す論文などを消費者庁に提出する必要がある。 農産物の場合は成分の含有量にバラツキが発生するため、一定の単位で成分の含有量を測定することが必要になるとして、農水省がサンプリングや分析に関する手順を決めることにしている。
また、生鮮食品などで届出者以外の小売店などがリパックする際には的確な表示がなされるような合意も必要になると山本氏は指摘した。
◆健康に貢献 産地の励み
学習会では、JAかごしま茶業の酒瀬川洋児専務が「べにふうき緑茶」の機能性表示に向けた取り組みを報告した。
べにふうき茶には「メチル化カテキン」が多く含まれアレルギー症状の抑制効果があることが解明された。さらに野菜茶業研究所などの研究で鹿児島が最適な産地として注目されたことから同県で2003年から栽培が始まった。花粉症などに悩んでいる人の役に立てればとの思いから、現在は101名の農家、50haまで栽培は広がっている。
品質・機能性成分のブレをなくすために、摘採・製造体系をつくり農家への研修で均一化をはかるほか、成分測定に基づく茶期別のブレンド実施などを行ってきた。
具体的な表示としては「本品はメチル化カテキンを含んでいるため、ハウスダストやホコリなどによる目や鼻への影響を軽減することが報告されています」などがイメージで1日あたりの摂取目安量のほか注意事項なども表示することなる。
酒瀬川専務は「べにふうき緑茶の機能性効果は実証されていたが、それをうたえなかった。新表示制度が茶業界の光明になれば」と表示の実現に向けて意欲を述べた。
◆果物のイメージ変える
JAみっかびの後藤善一組合長は「三ヶ日みかん」について報告した。
温州みかんに含まれる「β-クリプトキサンチン」は肝機能障害、動脈硬化、糖尿病など予防・改善に効果があることが国や大学の研究機関で多く報告されている。JAみっかびの組合員農家や職員を対象にした浜松医大と果樹研究所の研究でも、たとえばβ?クリプトキサンチンが骨粗鬆症を予防することが明らかになっている。
みかんに限らず、このように農林水産物については健康維持に有効な機能性成分が豊富にあることが明らかになっているが消費拡大にはなかなか結びついていない。
とくに果物については、健康を害することがないことが国の研究機関(国立長寿医療研究センター)で示されているが、「果物=デザート=甘い」というイメージが広まり、消費を控える傾向がある。
後藤組合長は「みかんは健康に役立つ食品」と広く強く印象づけることが大切で、そのために「β-クリプトキサンチン」の効能を表示できる新しい制度は追い風だとして、多くの産地がこの制度を活用して販売につなげることが求められていると話した。
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