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伸びる高齢者向け食品 富士経済2020年2月25日

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 総合マーケティングビジネスの富士経済は、高齢者人口が増加する中、介護や健康寿命の延伸を目的に拡大する高齢者向け食品の国内市場を調査した。

 調査では、高齢者向けの食品7品目と宅配サービス4品目で、在宅向け、施設向けとルート別で市場を捉えた。また、高齢者向け施設8業態における食事提供の実態などの動向を明らかにした。


◆高齢者向け食品(メーカー出荷ベース)

 高齢者向け食品は、2025年は2046億円で2018年比25.5%増が予測される。ボリュームゾーンの経腸流動食が、診療報酬改定の影響などにより需要が落ち込み、経口流動食や栄養補給食、とろみ調整食品・固形化補助剤にシフトしているが、市場は低たんぱく食を除くすべての品目が伸長するとみられる。

 施設向けでは慢性的な人手不足を背景に調理の簡略化需要が高まっており、従来は採用する際に価格面を重視する傾向が強かったものの、近年は人件費などの総合的なコストを考慮し、加工度が高く提供しやすい、栄養価値が高いなどの高単価・高付加価値商品の採用が進んでいる。

 在宅向けでは店頭における配荷が拡大することで流動食、やわらか食、栄養補給食が急伸するとみられる。


◆高齢者向け宅配サービス(小売ベース)

 高齢者向け宅配サービスは、2025年予測が2432億円で2018年比16.5%増。価格やリードタイムなどのきめ細やかなニーズに対応して弁当を直接高齢者に届ける病者・高齢者食宅配の需要が、近年在宅高齢者の増加により高まっている。一方で、従来給食サービスの利用や自家調理を行ってきた施設における人手不足の慢性化による需要拡大を受け、上位企業がコストメリットの高いサービスとして高齢者施設向け完成食宅配の提案を強化しており、市場拡大に寄与している。

 また、病者・高齢者を対象とする食宅配、冷凍食通販および食材宅配は、在宅向けだけでなく施設数の拡大が続くデイサービス、デイケアを中心とした小規模施設向けのBtoBルートの需要が増加している。

 食材宅配のユーザーは大半が65歳以下で、65歳以上の構成比は1割程度となっているが、ユーザーの高齢化を受けて、カロリー、たんぱく質制限食で調理済み食品の品揃えが強化されており、高齢者向けの実績についても拡大している。


<注目市場>
◆高齢者向け食品(メーカー出荷ベース)
 高齢者向け食品(メーカー出荷ベース)は、「在宅向け流動食」が2025年予測が90億円で2018年比69.8%増と、在宅高齢者の増加に伴い市場がさらに拡大すると予測。施設向けは診療報酬の改定などの影響により経腸流動食の需要が減少しているが、在宅向けは経口流動食の店頭配荷が好調に進み拡大を続けている。

 主要の店頭販売チャネルは薬局・薬店で、「明治メイバランスMiniカップ」をはじめ様々な商品が採用されている。また、近年は量販店でも介護用品売り場において面展開されるケースがみられる。

 調理の手間を削減することを主目的とする「やわらか食」で、「在宅向け」の2025年予測は75億円で2018年比78.6%増、「施設向け」の2025年予測は205億円で同45.4%増と共に需要が高まっている。

 在宅向けはライフスタイルの変化から時短や調理の簡略化需要の高まりを背景にレトルトパウチ入り商品を中心に店頭配荷が進んでいる。

 2019年は新規参入もみられるほか、電子レンジ対応商品が発売されるなど新たな価値提案により市場は活性化しており、大幅な拡大が見込まれる。 施設向けは慢性的な人手不足により需要が高まっており、舌でつぶせる加工度の高い商品から容易にかめる加工度の低い商品まで調理を簡略化できることから採用が進んでいる。

 2019年は朝食向けなど特定シーン向け商品が発売されるなど市場は活性化しており、今後も拡大していくとみられる。

 また、栄養補給食品はフレイル(虚弱)、サルコペニア(筋肉量の減少)予防に対する関心の高まりを背景に市場が拡大。在宅向けでは薬局・薬店を中心に店頭配荷が進み、施設向けも胃ろう造設が減少したことで経口摂取の割合が増加し、ゼリー状商品を中心に採用が進んでいる。

 特に介護予防・健康寿命の延伸を目的としたたんぱく質補給訴求商品の採用や残食率の低減を目的とした小容量・高栄養商品の需要が増加し、参入各社とも商品開発・訴求の強化が市場全体のトレンドとなっている。


◆高齢者向け宅配サービス(小売ベース)
 糖質やたんぱく質などの制限が必要な高齢者や、低塩分を訴求した完全調理済食(完成食)を自社物流網によって展開するサービスを対象とした「高齢者向け宅配サービス」(小売ベース)では、「病者・高齢者食宅配」が2025年予測で1080億円で2018年比14.5%増と、在宅高齢者の増加に伴い拡大している。大半が在宅向けだが、デイサービス、デイケアなどのスタッフ数が少ない日帰り主体の施設や、小規模高齢者施設からの需要が高まっている。各社が販促を強化しており、堅調に伸長していくとみられる。

 「病者・高齢者冷凍食通販」は、2025年予測が162億円で2018年比20%増と、高齢者や生活習慣病患者の増加に伴い市場が拡大。近年は糖尿病・腎臓病などの罹患者だけではなく、"未病"を訴求したメニュー開発で新たな顧客層を獲得している。
 高齢者施設や病院向けに展開する宅配・通販サービスである「施設向け完成食宅配」は、545億円で同29.8%増。施設スタッフの人手不足が慢性化するなか、調理人員、時間、コストの削減、衛生面でのリスク低減などのメリットから近年ニーズが高まっている。

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