「加工玄米」摂取で公的医療費減少を実証 医食同源生薬研究財団2021年8月19日
医食同源生薬研究財団は、東京農業大学、東洋ライス、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター・糖化ストレス研究センターによる共同研究成果が、玄米に含まれる亜糊粉層や栄養素摂取量が増加したことで、健康状態の改善や、疾病罹患率の減少に伴う「公的医療費減少」を実証したことを発表した。
2015、2016年度の被保険者一人あたりの月平均医療費
日本では医療費の膨張が財政危機を招いているが、原因究明や対策がほとんどされていない。経済産業省は、健康寿命延伸分野における民間の様々な製品やサービスの実態を把握し、供給・需要の両面から課題や問題点を抽出・整理するなど対応策を検討する目的で、2013年に「次世代ヘルスケア産業協議会」を設置。関連事業として和歌山県に「わかやまヘルスケア産業革新プラットフォーム」が発足した。
共同研究チームは、これらの一環として、近年、明らかになってきた玄米に含まれる栄養素による健康維持・増進に着目し、現代の医療費増大に原因究明と対策を練る参考資料とするため、主食の精白米を加工玄米に置き換えることが医療費削減へ有効か否かについて検証した。
同調査は、試験品に「亜糊粉層残存無洗米(SARFR)」または「ロウ層除去玄米(DBR)」を使用。被験者は、和歌山県内の協力企業3社(T社、A社、B社)に勤める被保険者(職員)と扶養者(家族)とし、各企業の試験品喫食率、健康保険組合発行の公的医療費の額を調査した。
「喫食率」は、農林水産省「米の消費に関する動向(平成28年)」にある米の1人当たりの年間平均消費量と、試験品の納品数量と加入者数により算出。「医療費」は、各企業の平均医療費と和歌山県民の医療費を対象とした。
介入方法は、T社では2014年6月からSARFR、2015年10月よりDBRを提供。B社は2018年11月から、C社では2018年2月から社員販売、社員食堂で両試験品を提供。被扶養者にも摂取協力を依頼し、2種類の試験品は自由に選択できるものとした。
その結果、T社の2015年度、2016年度の被保険者一人あたりの月平均医療費(0歳~74歳)を集計した結果、2015年度月平均医療費は全国平均は1万3909円、和歌山県平均は1万4124円、和歌山県同業者平均は1万3911円に対し、T社の平均は8269円(被保険者154人)となった。月平均医療費は、全国平均に比べ、和歌山県平均で9.4%高く、T社で35.9%低くなった。T社は、SARFRとDBR摂取を継続しており、2016年以降もT社の年平均医療費は低い水準を保っている。
次に、2016年度から2018年度の一人当たりの年平均医療費の集計結果では、SARFR摂食者の多いT社の年平均医療費は、2016年度が12万108円、2017年度は11万9264円、2018年度は12万7248円。和歌山県平均(2016年度17万5683円、2017年度18万966円、2018年度18万3372円)の68%となった。
SARFR摂食開始後の年平均医療費は、A社では40%(2017年度22万4335円、2018年度13万4354円)、B社では39 %(2017年度19万8892円、2018年度12万1172円)減少した。
以上の結果から、亜糊粉層や糠層に含まれる栄養素の摂量が増加した結果、健康状態が改善、疾病罹患率が減少、公的医療費が減少した可能性を示唆した。同財団は「元来、"玄米は健康に良い"といわれる所以である、栄養素の摂取量が大きく起因しているものと考えられ、西洋医学的なエビデンスありきの研究では明らかにならなかったもの。当財団では、今回のような"実証主義"に重きを置いた研究こそが、真に社会に対する貢献度が高いものと考える」とコメントしている。
2016年度から2018年度の一人当たりの年平均医療費 調査対象内訳
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