農産物流通DXで流通コスト・フードロス・温室効果ガス削減へ 神明、NTTなど5社が共同実験2021年11月8日
神明ホールディングス、東果大阪、NTT、NTT西日本、NTTアグリテクノロジーの5社は、NTTが提唱するIOWN構想の関連技術によるデジタルツインコンピューティングを用いて未来を予測し、流通コストやフードロス、温室効果ガス削減など地球環境問題の抑制に貢献することに合意。その実現に向けた共同実験を始めた。同成果は、11月16日~19日に開かれるNTT R&Dフォーラムに出展される。
農産物流通DXの全体概要
同取り組みは、サイバー空間上に仮想市場を構築し、NTTが提唱するIOWN構想の関連技術によるデジタルツインコンピューティングを用いて未来を予測。農産物が市場に運び込まれる前に取り引きすることで農産物流通にデジタルトランスフォーメーション(DX)をおこす。
農産物流通DXは、仮想世界(サイバー空間)、現実世界(リアル空間)、フードバリューチェーンエクスチェンジの3つで構成される。
仮想世界(サイバー空間)は、サイバー空間上に仮想市場を構築し、デジタルツインコンピューティングを用いた予測技術により「仮想相対取引」と「仮想競り」を行う。「仮想相対取引」では、卸売市場に集まる取引データや気象情報などによる一般的な生産を予測。これに加え、突発的なイベントや市場間の価格変動、コロナ禍における消費動向の変化など、複雑に絡み合った要素から特徴をとらえ、少ないインプット情報でも瞬時に未来予測を活用して、仮想空間上で売り手と買い手を結び付け、実際の取引希望日の数日から1週間程度前に売買を成立させる。一方、「仮想競り」では、農産物の価値を決めるのに必要な品質の把握、例えば、色や形・艶、糖度・酸度、リコピン・GABAなどの機能性成分をできるだけ正確に測定・数値化。バイヤーが現地にその都度訪問して仕入れなくても、遠隔地から買い手が農産物の良し悪しを判断し、高付加価値商品を取引する。
現実世界(リアル空間)では、ライフスタイルの変化によりニーズが急激している農産物の加工を一元的に行う加工工場を市場近隣に整備。また、デジタルツインコンピューティングを用いた予測情報により事前に労働者を確保するなど労働面での効率化を図る。
さらに、フードバリューチェーンエクスチェンジは、リアル空間で集めた情報をサイバー空間にある仮想市場に渡し、そこで行われた予測や解析の結果を再びリアル空間にフィードバックする。仮想世界(サイバー空間)と現実世界(リアル空間)を融合させ、関係するプレーヤーに様々な恩恵をもたらす。例えば、生産者は需要に応じた農産物を生産し、収益安定化を図りながら、物流コストを低減。卸売事業者は計画的な人員配置や他業務への人員を有効活用する。また、小売・消費者は生産情報をもとに販売計画を立てて安定した収入を得られ、鮮度の高い農産物を手に入れられる。
これらの取り組みに合わせて、自宅での食事の需要が高まる中、市場連動型の食材宅配サービスやdポイントを活用した消費者への新たな価値提供も検討。実証実験では、生産者、卸・仲卸、小売など、フードバリューチェーンに関わるプレーヤーが参画し、農産物流通DXに向けて取り組む。
農産物流通DXは、フードバリューチェーン全体の最適化を通じて、温室効果ガス削減や廃棄物の削減等、地球環境問題の解決を図る。温室効果ガス削減については、農産物流通DXサービス商用化を2024年頃に開始する。輸送トラックの積載率向上、流通ルート最適化、廃棄物の再利用により従来焼却で発生していた温室効果ガスの削減、輸送トラックの電動化、再生可能エネルギーの活用など他の施策も組み合わせることで、日本の2050年のカーボンニュートラルの実現に貢献。全体の輸送量の約35%の削減などをめざす。また、廃棄物の削減については、本来廃棄される余った農産物や規格外品を需要・ニーズを持つ消費者に対してマッチング。市場や加工工場で余った食品残渣を回収して堆肥をつくり、農家に提供して安心安全な野菜づくりを支援するNTT西日本の地域食品資源循環ソリューションも活用して堆肥化し、農産物の再生産につなげる。
予測技術の概要
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