農業はウクライナの要 脆弱者層向け5000万米ドルの初回緊急支援を要請 FAO2022年3月14日
国際連合食糧農業機関(FAO) 駐日連絡事務所は3月11日、ロシアのウクライナ侵攻を受け、今後3か月の同国農村地域に住む最大24万人の脆弱者層に向けて、最低5000万米ドルの初回緊急支援を要請した。
ウクライナは、人口の約30%(1260万人)が地方に住んでおり(2021年1月現在)、農業はウクライナの経済に重要な役割を果たしている。農業のGDPの割合は2007年の6.3%から2020年には9.3%に上昇しており、農業の川上と川下の産業を考慮すると、ウクライナ経済への貢献はGDPの約22%にも達し、農業はウクライナの要といえる。
また、ウクライナは世界第5位の小麦輸出国。2016/17年から2020/21年の間、世界市場の10%を占めており、ほとんどの小麦はキエフとムィコラーイウで生産されている。同じく黒海沿いにあるウクライナの主要な穀物港も、オデッサとムィコラーイウにある。
2021年は、ウクライナの小麦は世界の輸出シェアの9%を占めた。また、同時期のトウモロコシの輸出シェアはさらに大きく、平均15%で世界第4位のトウモロコシ輸出国。ムィコラーイウ地域のキエフは、チェルニーヒウ地域とともに、ウクライナの主要なトウモロコシ生産地域となる。
ウクライナの武力紛争が始まる前に、FAOは2021~2022年のトウモロコシ出荷量が3300万トンになると予測し、世界3位のトウモロコシ輸出国となると見込んでいた。
FAOは、農村開発、環境的に持続可能な農業、気候変動への適応と食料安全保障と生活のニーズに対応する人道支援の分野で、ウクライナを長い間支援。過去数年間にわたって、2460万米ドル相当のプログラムの中で、動物の健康を脅かす危険管理への支援、バリューチェーンに則った小規模農家への支援、紛争の影響を受けたコミュニティのニーズを満たすため、国連パートナーとの協力など、ウクライナ政府を幅広く支援してきた。
ウクライナでは、2月以前も、紛争の影響を受けた地域では食料不安が深刻だった。ウクライナ東部の政府管理下の地域(GCA)と政府の管理下でない地域(NGCA)での2021年11月の食料安全保障と生計評価は、58%の人々が収入が不足。生計を立てる機会と市場へのアクセスが限られているとしていた。さらに、28.3%の人々が「中程度または重度」の食料不安を経験。中でも特に、女性が世帯主である世帯(37.5%)は、男性が世帯主である世帯(20.5%)よりも食料不安の状況に多く陥っていた。
こうした状況の中、ウクライナ東部と全国の食料安全保障がさらに悪化することが予想されるため、FAOは今後3か月の同国農村地域に住む最大24万人の脆弱者層向けの最低5000万米ドルの初回緊急支援を要請した。
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