スマート林業の実現へ 荷物運搬など電動四足歩行ロボット活用した実証実験を実施2022年6月29日
森林総合研究所とソフトバンクは、電動ロボットの活用によるスマート林業の実現とゼロエミッションに向けて、2021年度に電動四足歩行ロボットの歩行実験を実施。ロボットが林業で担える作業を検証する実証実験を6月から開始した。
2021年度の実証実験の様子
同実証実験は、2021年度に森林総合研究所とソフトバンクが国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託した、「NEDO 先導研究プログラム/農山村の森林整備に対応した脱炭素型電動ロボットの研究開発」において実施。2021年度は、北海道下川町などにある造林地や急傾斜地などの過酷な環境下で電動四足歩行ロボットの歩行能力について調査・検討し、一定の条件下であれば斜面や障害物などがあっても安定した歩行ができることが分かった。
2022年度は、電動四足歩行ロボットが造林地の巡回や監視、荷物の運搬などの作業を担えるか検証。作業が可能な地表面の凹凸や柔らかさ、傾斜などを明らかにする。また、造林地で設定したルートを自動で歩行する機能や、複数台のロボットで協調作業を行うためのシステムの開発に取り組む。
さらに、造林地の多くを占める携帯電話の電波が届かない場所でもロボットを運用するため、衛星通信や長距離・広範囲をカバーするWi-Fi などの複数の通信手段を用いて、造林地でロボットが自動で歩行するための通信環境の構築および検証を行う。
ソフトバンクは、自動歩行機能に高精度測位サービス「ichimill(イチミル)」を活用するほか、通信事業者として持つ知見やノウハウを提供。実験は下川町と茨城県つくば市で計2回の実施を予定。ロボットは米国Boston Dynamics 社の「Spotスポット)」を利用する。
国内の人工林は、約半分が伐採時期を迎えて木材の利用が拡大しているが、林業従事者の高齢化や担い手不足、少ない伐採収益のために森林の再造林が進んでいない。この状況は、二酸化炭素の吸収量の低下や森林の荒廃による災害の増加などの懸念にもつながる。また、林業は人力作業が多いため、省力化と労働災害の削減が大きな課題になっている。森林総合研究所とソフトバンクは、林業が抱える課題を、ロボットなどのテクノロジーを活用してスマート林業の早期実現をめざす。
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