木材中の放射性セシウム濃度 増加の頭打ちか減少への転換を確認 森林総合研究所2022年8月5日
森林研究・整備機構森林総合研究所の研究グループは、福島原発事故で汚染された樹木の木材・樹皮中の放射性セシウム(セシウム137)濃度を事故後1年目から現地調査でモニタリングし、時系列解析によって事故後10年間の変化を明らかにした。
木材試料を採取する様子。放射性セシウム(セシウム137)濃度が低い地域では、
測定に多量の試料が必要であるため伐採調査を行っている
東京電力福島第一原子力発電所事故で飛散した放射性セシウム(セシウム137)は、東日本の広い範囲に降下し、一部は樹木の表面に沈着。さらにその一部は樹木の表面から内部に吸収された。また、土壌に降下したセシウム137は、根から継続的に吸収され、樹木の内部に移行している。福島県および近隣県で生産される木材を建築に使っても外部被ばくが問題にならないが、燃料(薪・木炭)やきのこ原木への使用は、濃縮や内部被ばくを考慮して、非常に低い濃度以下のもののみに制限されている。
また、木材生産で大量に発生する樹皮も利用・廃棄の際に問題となる場合があるため、森林管理・木材生産の計画や意思決定を行う上で、木材・樹皮中のセシウム137 濃度の正確な把握と予測が重要な課題となっている。
同研究によると、木材中のセシウム137濃度は事故後数年間では一部の森林で増加傾向にあったが、その後多くの森林で増加が頭打ち、あるいは減少に転じたことが明らかになった。一方、樹皮中のセシウム137濃度は、全体的に減少傾向にあったが、土壌からのセシウム137の吸収量が多いと考えられた森林では濃度の減少率が低い傾向にあることがわかった。
多くの森林で樹木による土からのセシウム137の吸収と落葉・落枝による排出が次第に釣り合ってきたと考えられ、今後予測精度の向上や吸収特性の解明が進むと期待される。ただし、土壌からのセシウム137の吸収が多い森林では木材・樹皮中のセシウム137濃度が高止まりする可能性があり、引き続き動向を注視するとともに、吸収の多寡を決める要因を明らかにすることが重要となる。
同研究成果は、7月4日に『Scientific Reports誌』でオンライン公開された。
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