シカ捕獲が被害軽減に与える効果 都道府県レベルの広いスケールで検証 森林総合研究所2022年9月7日
森林研究・整備機構森林総合研究所と熊本県林業研究・研修センターの研究グループは、ニホンジカの積極的な捕獲を実施した地域では、確かに林業被害軽減につながることを実証した。
図1. 2009年から2017年の熊本県におけるシカの捕獲数(A)、林業被害の増減傾向(B)
およびシカの生息密度の増減傾向(C)
同研究グループは、熊本県全域を対象にシカの捕獲数、密度、林業被害の程度を解析したところ、林業被害の増減傾向には地域差がみられた。また、多く捕獲した地域ほど生息密度が減少し、それに伴って被害が減少していた。捕獲が被害軽減に与える効果について、これまで小さなスケール(林分単位)で検証した例はあったが、都道府県レベルの広いスケールで検証した研究は世界的にも少なく、とても重要な知見となる。
この研究では、熊本県を184の地域に分割し、2009年から2017年までの各エリアの林業被害やシカ生息密度の増減傾向とシカの総捕獲数を調べた。まず、シカの捕獲数と被害の傾向を比較したところ、たくさん捕獲したエリア(図1A)ほど被害は減少(図1B)。また、県南部ではたくさん捕獲されているエリアが多く、さらにシカの生息密度も減少(図1C)していた。これらの結果は、シカ捕獲により生息密度が減少し、結果として、捕獲が被害の軽減に効果的であることを示す重要な証拠となる。
しかし、県全体としての被害件数には明らかな増減傾向は認められず、たくさんのシカを捕獲したエリアで被害が減少。一方で、捕獲が少ないエリアではシカが増え、被害も増加していた。つまり捕獲の効果がおよぶ地理的範囲には限界があり、一部の地域でたくさん捕獲しても、県全体としては効果が見えないことから、捕獲の効果がなかったという間違った評価をもたらす危険がある。
このことから、都道府県レベルで広域的な被害軽減をめざす際には、都道府県という広い単位だけで捕獲数を決めるのではなく、小エリアに分割し、エリアごとに目標とする捕獲数の下限を決めて実施・評価する必要がある。
同研究成果は、7月13日に『The Journal of Wildlife Management』 誌で公開された。
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