世界初"魚類の1日毎の経験水温"解明 魚類生態の理解と資源保全へ 京都大学2022年10月18日
京都大学大学院人間・環境学研究科の武藤大知 修士課程学生と石村豊穂准教授、水産研究・教育機構の髙橋素光主幹研究員、筑波大学生命環境系の西田梢特任助教の共同研究グループは、魚類の1日毎の経験水温を世界で初めて解明した。
水温は海洋生物の分布を決定する最も重要な環境要素の一つで、今後の地球温暖化による海水温の変化は、多くの海洋生物の分布や資源量の変化に大きな影響を与えると考えられている。水産資源を今後も持続的に利用していくには、水温変動が魚類の成長や分布・回遊に与える影響を理解することが重要。しかし、海洋を大規模に回遊する魚類の経験環境を詳細に観測する手段には限界があり、魚類の生息環境や生態の理解は進んでいなかった。
同研究では独自開発の安定同位体分析技術と画像解析によりマアジ耳石の超微小領域の炭素酸素安定同位体(δ13C・δ18O)分析を実現。魚類個体の稚魚期における1日毎の経験水温を明らかにすることに世界で初めて成功した。この成果はマアジの成長・生残に最も重要である稚魚期の生態解明に大きく寄与すると期待され、多魚種への応用によって将来的な水産資源の動態評価や資源保全策の策定にも貢献できると考えられる。また、鍾乳石・貝・サンゴなど地球環境の変化を記録する炭酸カルシウムの高時間分解能解析にも応用が期待できる。
同成果は7月29日、国際学術誌『Rapid Communications in Mass Spectrometry』に掲載された。
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