餌のプランクトン減少がカタクチイワシの再生産に悪影響 水産研究・教育機構2022年11月28日
水産研究・教育機構、香川県、愛媛大学、広島大学の共同研究チームは、春~初夏のカタクチイワシの主要な餌である動物プランクトンが減少していることを発見。その結果、カタクチイワシの雌は痩せ、質の悪い卵を産むことになり、発育初期の生き残りが著しく悪いことを発見した。
燧灘(上)およびパッチ網漁船によるカタクチイワシ(シラス・カエリ)漁(下)
瀬戸内海は国内有数の生産性の高い海域だが、近年は小型魚類等の水産資源の減少が顕著で、栄養塩濃度の低下との関係性が指摘されている。瀬戸内海中央の燧灘(ひうちなだ)では、カタクチイワシのシラスやカエリの漁獲量が2000年代初頭から急激に減少しており、原因究明が強く求められてきた。
水産研究・教育機構、香川県、愛媛大学、広島大学の共同研究チームは、長期間の野外調査や飼育実験により、燧灘におけるカタクチイワシ漁獲低迷の原因を調査。その結果、春~初夏のカタクチイワシの主要な餌である動物プランクトンが減少していることがわかった。また、それによりカタクチイワシの雌が痩せ、質の悪い卵が産まれることになり、発育初期の仔魚の生き残りが著しく悪くなっていることを発見した。
動物プランクトンの減少には、栄養塩不足で餌となる植物プランクトンが減少したことや水温の変化も影響していると考えられ、こうした複合的な要因が燧灘におけるシラスやカエリの漁獲量減少に影響を及ぼしていると考えられる。
同研究により、瀬戸内海におけるカタクチイワシの再生産への影響について科学的なデータが得られるようになり、今後は貧栄養化-餌プランクトン発生の変化-漁業生産低迷の因果関係に関する理解が飛躍的に進むとみられる。
一方、瀬戸内海では貧栄養化に加え、高水温化も漁業生産の低迷に関与していることが示され、問題はより複雑。瀬戸内海では湾や灘によって海洋環境やその生態系の構造、小型魚類の生活史が大きく異なるため、瀬戸内海における栄養塩類の適切な管理の在り方や水産資源の持続的な利用についての検討を進める上でも、今後も継続した調査が必要となる。
同研究は、水産庁の漁場環境改善推進事業のうち「栄養塩の水産資源に及ぼす影響の調査」等により行なわれた。
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