「しょうゆ油」で海洋生分解性プラスチックの生合成を発見 岩手大、東京農大と共同研究 ヤマモリ2023年3月7日
総合食品メーカーのヤマモリは、岩手大学農学部 応用生物化学科の山田 美和准教授と東京農業大学応用生物科学部 醸造科学科の前橋健二教授と産学共同研究で、醤油の副産物である「しょうゆ油」から海洋生分解性プラスチックとしての活用が期待されているpoly(3-hydroxybutyrate)を合成できることを発見。しょうゆ油の新たな利用用途の可能性を見出した。
醤油は、製造の過程でしょうゆ油が副産物として発生するが、通常は使われずに廃棄されている。1889年の創業時から醤油醸造に取り組むヤマモリは、これまでしょうゆ油を廃棄することなく活用しており、しょうゆ油は工業用せっけんの原料および燃料として使用されている。一方、副産物を未利用資源ととらえ、さらに付加価値のある活用を求め長年にわたって検討してきた。
しょうゆ油を原料とした炭素循環サイクル(出典:岩手大学応用微生物学研究室HPより一部改変)
同社は、生分解性プラスチックの生合成について2020年から検討を開始。2021年に微生物によるプラスチックの生合成を研究する岩手大学農学部の山田准教授と、醤油醸造に造詣の深い東京農大 応用生物科学部の前橋教授の研究室に協力を申し入れ、研究に着手した。
このほど、しょうゆ油を炭素源とし、カプリアビダス・ネカトールを培養したところ、海洋生分解性プラスチックとしての活用が期待されているpoly(3-hydroxybutyrate)を合成できることを確認。しょうゆ油を炭素源とした場合、大豆油を用いた場合と比較してP(3HB)の合成量が高く、しょうゆ油がPHA合成に適していることが示唆された。他社のしょうゆ油を用いた場合においても、P(3HB)の合成が確認された。
日本醤油協会の調査によると、醤油の製造工程で生まれるしょうゆ油の量は、全国で4600トン(2006年実績)に及ぶと試算されており、業界を挙げて再利用を目標に掲げている。この研究技術によりしょうゆ油を有効活用することは産業廃棄物の発生と海洋プラスチックによる環境汚染の両方を削減することにつながる。
この研究成果は、3月14~17日にオンライン開催される日本農芸化学会 2023年度広島大会で発表する。
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