8月の食品値上げ 1102品目で7か月ぶりに減少 ラッシュから「一服」帝国データバンク2023年8月1日
帝国データバンクは、食品メーカー主要195社における価格改定動向について調査を実施した。その結果、8月の値上げは、パック牛乳など1102品目となり、7か月ぶりに前年から減少。8月は「調味料」が最多の409品目 パック牛乳など「乳製品」も200品目以上が値上げとなり、身近な日配品の値上げ、消費者の「インフレ実感」がより強まると見込まれる。
2023年の食品値上げ
家庭用を中心とした飲食料品のうち、8月に値上げする品目数は1102品目となり、前年8月(2516品目)から約1400品目減・4割の水準にとどまったほか、今年1月以来7か月ぶりに前年同月を下回った。2022年8月に実施された値上げ品目のうち、大部分を占めた「かまぼこ」や「はんぺん」など水産練り製品や、冷凍食品などの分野でまとまった値上げがなかったことが要因で、8月単月の品目数を押し下げた。
一方、8月に値上げされる食品は、乳価改定の影響を受けてパック牛乳やヨーグルトなど乳製品のほか、だし製品など調味料やジュース、シリアル製品、駄菓子など多方面にわたる。
2023年通年の値上げ品目数は、既に実施されたものや今後予定するものを含め、累計で3万710品目となった。2022年通年の2万5768品目を既に上回り、年間累計としてはバブル崩壊以降で類を見ない記録的な値上げラッシュとなった。
9月以降の推移をみると、9月は味噌など調味料や菓子を中心に約2000品目が予定されているほか、10月は日本酒やワインなど酒類を中心に4000品目を超え、4月以来半年ぶりに5000品目超えの値上げラッシュとなる可能性がある。同月の平均値上げ率も年内で最も高い17.5%と、大幅な価格引き上げが予定されている。
2023年の値上げ原因別
年内の値上げは、原材料価格の急激な価格上昇ペースが落ち着いたことを背景に、10月を最後に一旦ピークアウトし、累計では2022年より1万品目多い3万5000品目前後が想定される。ただ、電気・ガス代に加え、プラ製包装資材、物流費の増加などのコストアップ要因は残っており、値上げは緩やかながらも断続的に続くとみられる。
実施ベースでの値上げ品目数動向
8月は「調味料」が最多の409品目 パック牛乳など「乳製品」も200品目超が値上げ
2023年8月の値上げは、「調味料」(409品目)が全食品分野で最多だった。品目数で調味料が最多となるのは6月以来2か月ぶりとなる。鍋つゆ製品や削り節など、だし関連製品を中心に値上げとなった。「乳製品」(265品目)はパック牛乳やヨーグルトなどが対象となった。
2023年通年では、全7分野で前年を超え、最も多い「加工食品」は全食品分野で唯一1万品目を超えた。「菓子」(2099品目)は、輸入小麦粉や生乳、粗糖のほか、チョコレートの原料となるカカオ豆など菓子生産に必要な原材料価格が上昇したことが影響した。「原材料」(799品目)は、欧州の熱波や干ばつの影響を受けたオリーブオイル製品の大幅な値上げが目立つ。
身近な日配品の値上げ、消費者の「インフレ実感」より強まる見込み
足元では、高い上昇率が続く食品の値上げに対して消費者の購買力が低下する「値上げ疲れ」が鮮明になっている。特に8月の値上げは、パック牛乳など価格の変動に敏感な日配品が中心で、値上げ品目数以上に消費者が「インフレ」を実感しやすい。価格の上昇に対する消費者マインドが寛容さを失いつつあり、生活防衛志向や値上げ疲れがより進行する可能性がある。
一方、足元では輸入原料を中心に価格の変動が落ち着きつつあり、複数回に及ぶ値上げを実施してきた食品メーカーでは相対的にコスト対応力が高まり、人件費など一部の「値上げ圧力」について吸収が可能となる傾向も出始めている。ただ、ウクライナ産小麦の動向や、電気・ガス料金の負担軽減策など先行きの不透明感は強く、2024年以降も断続的な値上げが続くとみられる。
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