給食事業 2割が「全く値上げできず」給食業界動向調査 帝国データバンク2023年9月11日
帝国データバンクは9月8日、「給食事業者」の2022年度業績動向について調査・分析の結果を発表。給食事業者の3割が「赤字運営」となっており、コスト上昇で厳しい採算状況が鮮明になった。また、給食事業者の2割が価格転嫁「まったくできず」、取引先との交渉難を訴える声が相次いでいる。
国内で社員食堂や学生食堂の運営、給食サービスを提供する企業を調査した結果、2022年度の利益動向が判明した374社のうち、34%にあたる127社が「赤字」運営だったことが分かった。前年度から「減益」となったケースを含めると、全体の6割超で業績が「悪化」。また、コロナ禍以降(2020年度~)から3年連続で赤字となった企業は1割を占めた。値上げ交渉が難航する事業者が多くみられ、厳しい採算状況を強いられている。
給食事業者の3割が「赤字運営」
給食事業では、特に学校給食などで民間に委託する自治体が増えていることから、給食需要は引き続き拡大傾向が続いている。また、給食弁当などを手掛ける企業では中食需要の増加を追い風に利用需要が拡大しており、コロナ禍に比べて増収基調となった企業が多かった。
一方、足元では給食事業の入札に参加する業者も増えており、価格面で競争が激化。加えて、生鮮食品や加工食品を含めた食材価格の高騰、調理スタッフや栄養士などの人手不足による人件費、原油価格上昇による光熱費の上昇が響き、当初の契約金額では賄いきれず利益面で悪化する事業者が多くみられた。一部では原材料価格の上昇を受けて受注単価の引き上げに成功したものの、再度・再々度の値上げ交渉は難航したケースがみられた。
給食事業者の2割が価格転嫁「まったくできず」
帝国データバンクが今年7月、日本企業1万社を対象に「価格転嫁の動向」について調査した結果、回答が得られた20社の給食事業者のうち15%が「まったく価格転嫁できていない」と回答。価格転嫁ができた企業でも、「20%未満」(35%)や「50%未満」(15%)にとどまる企業が多かった。コスト上昇分をすべて価格転嫁できた企業はゼロ。100円コストがアップした場合、価格に転嫁できた割合の平均は27.1円で、全産業平均(43.6円)を大きく下回った。
給食事業者の2割が価格転嫁「まったくできず」
食材や人件費など運営コストが上昇しているものの、価格に反映ができない給食事業者の声が多く聞かれた。競争入札が多いため「値上げは数年に一度など制限がある」という声や、社員食堂などでは「(値上げを)かたくなに拒絶され、取引停止を盾に交渉に応じる様子もない」など、厳しい状況を訴える声が相次いだ。価格転嫁ができた事業者でも、「何回も短期間に値上げできない」「どこまで値上げを受け入れてもらえるかわからない」といった声が聞かれた。
学校給食などを運営する「ホーユー」(広島)が突如事業停止した問題で、全国の学校や施設内食堂で食事の提供が滞っている状況が表面化している。同社では食材価格や人件費、光熱費など物価上昇が続く一方、価格改定が進まず事業継続が困難になったという。
最近では大手飲食チェーンや宅配事業者などが給食事業へ参入・展開するケースも多く、地場給食事業者間の競争も激化している。加えて、学校や官公庁などの入札事業では価格競争に陥りやすいうえ、食材費や人件費が入札当時の想定より高騰したとしても「契約期間中の価格改定が非常に困難」といったケースも見られ、価格転嫁できずに採算割れとなり業績が悪化する事業者が増加している。
足元では、2022年以降累計で5万品目を超える食品が値上げされるなど、急激に進んだ物価高を背景に補正予算等で給食事業者へのコスト補填を検討・実施する地方自治体もある。ただ、「どのような根拠でコストアップ分を計算すればいいかわからない」という声も寄せられ、給食事業者と行政の双方でコスト上昇と価格転嫁のバランスを決める場が求められる。
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