生鮮6部門の産直供給高2750億円 産直比率30% 全国生協産直調査 日本生協連2024年2月19日
日本生活協同組合連合会は2月16日、第11回「全国生協産直調査」の調査結果を発表。生鮮6部門の産直供給高は2750億円、産直比率30%となった。価格については、生産者も組合員も厳しい実態が明らかになった。
生協産直は生産者と消費者がつながり、相互理解を深めることで安全・安心、たしかな商品を組合員に届けること、持続可能な農業に貢献することを目指し、1970年代から全国の生協で取り組んでいる。同調査は、1983年度に第1回調査を実施して以来、ほぼ4年毎に行われ、今回で第11回目。生協産直の現状を評価し、今後の方向性と課題を提起することを目的として実施され、①生協調査、②生産者団体調査、③生協組合員調査、④生協役職員調査の4つの調査から、5年間における生協産直の実態を明らかにするとともに、生協産直の役割を5つの提言としてまとめている。
今回の調査によると、生鮮6部門の総供給高約8500億円のうち産直の供給高は約2750億円規模となっている。また、産直比率は、30%(青果31.8%、米55.6%、精肉40.6%、牛乳24.9%、卵70.4%、水産9.2%)となり、生鮮部門において産直は非常に重要な位置づけにある。過去の調査と比較すると、精肉と卵の産直割合は調査ごとに増加しており、水産の産直割合も直近3回の調査の中では最大の値となっている。
一方、米の産直割合は減少。一部の生協の産直定義の見直しにより、牛乳の産直割合も大きく減少した。また、生産者団体の約7割が、今後生協との取引を拡大したいという意向を示している。生協や担当により生産者とのコミュニケーションレベルに違いはあるが、生協との取引に対する満足度も高く、生産者団体にとって生協との産直取引は重要な取引であると言える。
生協の産直割合と産直供給高の推移(生協調査)
産直加工品は生協・生産者団体の双方で充実。さらなる拡大の可能性も
生協で産直加工品の取り扱いがある割合は62.1%。2022年度の産直加工品の供給額は約241億円となり、産直加工品は重要な商品となっている。同様に、生産者団体においても、加工品の開発・生産がある割合は54.1%。また、産直に限らず、加工品の開発・生産を行っている生産者団体のうち、69.4%が加工品を生協へ出荷している。これらから、加工品の取り扱いは充実してきており、今後産直における加工品もさらに拡大する可能性がある。
産直加工品の取り扱いがある生協の割合(生協調査)
持続可能な農畜水産業・地域の実現に向けた取り組みの広がり
環境保全型農業・漁業による生産物の取り扱い状況については、有機JAS・特別栽培・独自ブランドの供給割合は合計で9.7%。また、米の総供給においては、有機JAS・特別栽培・独自ブランドの供給割合は33.1%を占める。
国産の農畜水産物の利用促進に向けた取り組みとしては、「収穫体験などの農畜水産業の体験機会の提供」「国内農業や地場産業について学ぶ学習会の実施」に取り組む生協が多くなっている。また、国産や地場食品の供給に関しても、専用コーナーの設置、シリーズ化・ブランド化、供給キャンペーン、マークの付与など、様々な取り組みが行われ、これらを実施している生協の割合は70.7%。さらに、休耕田や耕作放棄地対策として、「飼料用米・稲の活用」に取り組んでいる生協は50.0%。
一方、生産者団体における持続的な農畜水産業やSDGsについて、何かしらの取り組みをしている団体が全体の8割以上を占め、意識の高さが明らかになった。
環境保全型農業・漁業による生産物の取り扱い状況(生協調査)
価格は、生産者も組合員も厳しい実態が明らかに
生産者団体への影響について調査した結果、コロナ禍と生産資材価格の高騰による影響を確認した。そこで明らかになったのは、コロナ禍の影響以上に、生産資材価格の高騰がより深刻な状況を生んでいること。特に、「資材高騰の影響を取引価格に転嫁できていない」と回答した生産者団体が約80%に上り、「経営状況が悪化している」と回答した団体も36.8%に達した。生産資材価格高騰への対応が喫緊の課題となっている。一方、近年の物価高騰の影響は組合員のくらしにも大きな影響を与えている。調査結果から、組合員の低価格志向が一段と強まっている実態が明らかになった。生協は組合員のくらしを応援していくための商品供給も求められており、既存の流通形態に囚われない生協産直ならではの取り組みを強めていくことが重要になる。
こうした結果に対し日本生協連は、生協産直の更なる発展のために、生産者とのパートナーシップを強化するとともに、関係者すべてとの連携を促進することが最も重要であると提言。これからの生協産直は、「持続可能な食と農畜水産業・地域をめざす」という共通の思いを持った関係者でつくられる共創のプラットフォームとして、産地と生協をはじめ、流通、加工、製造、そして組合員まですべての関係者が従来の流通の枠組みに縛られず、生産から消費までを一つにつなげ、全体の価値を高めていくプラットフォームを創っていくこととしている。
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