サステナブルフード市場 2023年市場規模は1722億円と推計 矢野経済研究所2024年3月11日
矢野経済研究所は3月8日、国内のサステナブルフード市場を調査し、市場概況、参入企業の動向、および将来展望を発表。2023年のサステナブルフードの市場規模はメーカー出荷金額ベースで1722億円と推計した。
市場概況
同調査によると、2023年のサステナブルフードの市場規模はメーカー出荷金額ベースで1722億円と推計。近年、食料生産に関して、気候変動や環境問題など、農業・水産業・畜産業を取り巻く環境は大きく変化している。加えて、2022年以降は、世界的な政情不安定の影響から、食品の供給不安定化や価格高騰が発生し、食料安全保障の強化や持続可能な食料生産が世界的な課題となっている。
持続可能性に配慮した食料生産や消費活動が長期的に求められる中、オーガニック農作物(有機JAS)や植物工場産野菜などの農産物、ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)、MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)、MEL(マリン・エコラベル・ジャパン協議会)などの認証水産物や陸上養殖の水産物、家畜の生育方法・生育環境に関する基準を満たしたアニマルウェルフェア畜産物、代替肉(植物由来肉・培養肉)などが注目を集めている。
エシカル消費意識の高まり
エシカル消費は、倫理的な消費を指し、環境問題や社会問題といった大きなテーマに対して、原材料の種類や生産方法などの観点から環境に配慮した商品を選択する消費行動によって社会に貢献しようとする考え方。このエシカル消費は、国際目標となったSDGsと関係する考え方で、近年は消費者や生産者の間でも、SDGsの観点から環境保護による持続可能な社会の実現に向けた取り組みに対して理解が深まりつつある。
2015年9月の国連サミットで採択された、2016年から2030年までの期間での国際目標であるSDGsは、持続可能な社会に向けて取り組むべき17の目標とその課題ごとに設定された169のターゲット(達成基準)から構成されている。
この17の目標のうち、12番目に設定されている「つくる責任つかう責任」は、廃棄物の削減などについて生産・消費パターンを変えることを目標としている。現在の生産・消費パターンは地球環境に対して過度に負担を強いており、このまま同じ生産・消費パターンを繰り返していると、化石燃料や金属などの貴重な地球資源が枯渇してしまう可能性がある。そこで注目されているのがエシカル消費という考え方であり、エシカル消費を続けることがSDGsの目標「つくる責任つかう責任」の達成に繋がる効果的な手法と捉えられている。
将来展望
オーガニック農産物は、スーパーマーケットなど小売店での品揃えが拡充しており、オーガニック農産物を扱う事業者間での流通量が拡大。今後は栽培技術の普及と生産者の増加により安定供給が進み、低価格化と普及拡大が始まると考える。
植物工場産野菜は、天候不順の激化等から露地野菜の調達が不安定化する中、供給量・品質ともに安定調達できる点が魅力となり、需要分野は業務用・小売用ともに拡大。洗浄の手間などが少ないことから、生産工場の省力化に繋がることもメリットとなり、今後も市場は拡大する見込み。
認証水産物は、SDGsの認知度が向上したことに伴い水産資源や環境への配慮が進み、事業者の認証取得が加速した。大手小売業の購買方針としては認証商品に対して積極的であり、今後も認知拡大や小売店等での取り扱い拡大を見込む。
陸上養殖水産物は、通常の養殖と異なり海への影響がほとんど無いことから環境負荷が低く、持続可能性が担保されているため、持続可能な原料調達に注力するコンビニエンスストアなどの需要にも合致している。より持続可能性に配慮した水産物が、消費者の購入選択肢の一つとなるよう、販売拡大を期待する。
代替肉(植物由来肉・培養肉)は、植物由来肉では小売店での販売や外食メニューへの導入等が進み、消費者との接点が増加し、認知度が高まっている。培養肉では、日本国内での食品の安全性や表示ルールなどに関連する法律の整備が整うとともに、2020年代半ばには、生産における基礎技術の完成とともにコストダウンの取り組みが進むことが想定され、2020年代後半に掛けて市場形成が進むと見込む。
アニマルウェルフェア畜産物は、現状では限られた規模の市場となっているが、中長期的には増加傾向での推移を見込む。市場は欧米で先行しており、日本でも家畜の飼育環境下での配慮などについて適切な消費者理解を進めることで、市場拡大に寄与する可能性がある。
持続可能性への社会的需要の高まりから市場は拡大し、日本国内におけるサステナブルフード市場は、2030年にはメーカー出荷金額ベースで2976億円に伸長すると予測する。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(119) -改正食料・農業・農村基本法(5)-2024年11月23日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (36) 【防除学習帖】第275回2024年11月23日
-
農薬の正しい使い方(9)【今さら聞けない営農情報】第275回2024年11月23日
-
コメ作りを担うイタリア女性【イタリア通信】2024年11月23日
-
新しい内閣に期待する【原田 康・目明き千人】2024年11月23日
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日