カギケノリによる牛のゲップ由来メタン削減へ アルヌール・山川町漁協と連携開始 農林中金2024年3月26日
株式会社アルヌール、山川町漁業協同組合、農林中央金庫の3者は3月25日、カギケノリによるウシのゲップ由来メタンの削減を通じた社会と環境への貢献を目的とした「Kaginowa」における連携で基本合意書を締結したことを発表した。
カーボンニュートラルに向けた農林水産業由来のGHG排出の中で大きな課題として認識されているのが、牛のゲップに含まれるメタン。日本におけるメタン排出のうち、40%程度が家畜のゲップや排泄物から生じていると試算されている。牛をはじめとする畜産がたんぱく源の確保や食文化の維持という観点から、今後も重要な農業の一分野であるために、牛のゲップ由来のメタンの抑制は急務といえる。
こうしたなか、近年注目を集めているのが、紅藻類の一種であるカギケノリ。畜産が盛んなオーストラリアでは、牛の餌飼料に約0.2%のカギケノリを混合することで、牛のゲップによる発生するメタンガスを最大98%減少させることを確認。カギケノリは日本でも一部海域で自生している。
微細藻類にかかる知見、技術を有するアルヌールとカギケノリが自生する海域を所管する山川町漁協はこれに着目し、カギケノリの養殖と安定供給技術の確立による、畜産のメタン削減に向けて両者での連携を開始した。また、農林中金は管轄海域の自然共生サイト登録やブルーカーボン創出をはじめとした先進的な環境課題に取り組む山川町漁協との連携において、両者のカギケノリにおける取組み、構想に賛同。情報提供や取組み拡大に向けた議論に参加してきた。
日本でカギケノリの養殖と安定供給技術を確立することは、メタン削減を通じた畜産のサステナビリティにとって極めて重要なアプローチの一つだが、技術開発だけでなく、技術を実装していくために、バリューチェーン、サプライチェーンにおける多様なプレイヤーを巻き込んだビジネス化の検討も不可欠となる。
アルヌールと山川町漁協は、カギケノリにかかる取組みを「Kaginowa」として、両者の技術開発の取組みを支え、趣旨に賛同する多様なプレイヤーにパートナーとして参画を呼び掛けた。これを受け、農林中金は、プロジェクトの発展に向けたサステナビリティ知見やカギケノリによるメタン削減効果のカーボンクレジットにかかる助言提供を行うパートナーとして、三者で基本合意書を締結し、「Kaginowa」に参画する。
日本におけるカギケノリによるメタン削減のスキーム確立は、畜産のGHG排出を削減・抑制し、気候変動対策に貢献するだけでなく、魚価の低迷や水揚げの不振に直面する水産業の新たなビジネスチャンスとなりうる。地域の基幹産業である農業と水産業の振興は、カーボンクレジットによる資金還流等も合わせ、地域のサステナビリティを向上させることにもつながる。
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