過去77年間の小笠原諸島の植生変化を解明 人為的攪乱の履歴が生態系の復元可能性に影響 森林総研ら2024年5月17日
森林研究・整備機構森林総合研究所、日本森林技術協会、東京都立大学の研究グループは、1935年に記録されていた小笠原諸島の植生図を電子化し、昭和初期に小笠原諸島で行なわれた天然林調査の報告書資料を電子化し、現在の植生図と比較することで、77年間で植生がどのように変化したかを明らかにした。過去の人為的攪乱の履歴が、生態系の復元可能性に影響することがわかった。
同研究グループは、1979年と2012年の植生図の比較から77年間の変化を明らかにした結果、77年間での植生変化の傾向は、過去の森林伐採の規模や侵略的外来種の導入の有無など歴史的な要因によって島間で大きく異なっていた。一方、部分的に一度他の植生に変化しても、残存している山地林の面積の割合が大きければ、元の状態に回復しやすいこともわかった。
図1:1935年時点の調査結果がまとめられた報告書資料の一部(左:植生図、右上・右下:調査票)
しかし、過去の伐採により自然林が広く失われてしまった島や、侵略的外来種が導入された島で生態系の保全・再生を行うには、かつて原生林を構成していた種を補助的に植栽し、生態系の回復を促進するような、より積極的な人為的介入が必要になることが明らかになった。小笠原諸島で、外来種の出現がほとんどみられない時期の植生調査資料は極めて貴重で、今後の生態系保全・再生活動への活用が期待される。
同研究では、小笠原諸島の主要な島嶼である聟島むこじま列島、父島列島、母島列島、火山列島に位置する合計9島の1935(昭和10)年時点での植生図や植生調査資料を電子化した。これによって、1935年、1979年および2012年の植生データを比較し、その間の変化を知ることができるようになった。
その結果明らかになった77年間での植生変化の傾向は、島ごとに大きく異なっていた(図2)。聟島列島の聟島では、今は草原となっている場所がかつては乾性低木林だったことが明らかになった。これは、第二次世界大戦末期に無人化してから、植物を食害する侵略的外来種ノヤギが加速度的に高密度化した影響と考えられる。
父島や母島では、今は二次林やトクサバモクマオウ、アカギといった侵略的な外来樹木の森林が広がるが、かつてはシャリンバイやアカテツなどが生育する乾性低木林やモクタチバナやウドノキなどが生育する湿性の森林が広がっていた。これは、居住人口が多かったこれらの島で、過去に森林が広く伐採されたことによる影響と考えられる。
これに対し、火山列島の北硫黄島では、ノヤギや人間の影響が少なく、昔も今と変わらずチギ林が広く分布していた。さらに、固有種の生息場所となる山地林は、部分的に一度他の植生に変化しても、残存している山地林の面積が大きければ、1935年時点での状態に回復しやすく、面積が小さいとほとんど回復しないことがわかった(図3)。
同研究成果は2月19日、『Applied Vegetation Science』誌でオンライン公開された。
重要な記事
最新の記事
-
【第46回農協人文化賞】資金循環で地域共生 信用事業部門・埼玉県・あさか野農協組合長 髙橋均氏2025年7月14日
-
【第46回農協人文化賞】組合員の未来に伴走 信用事業部門・秋田やまもと農協常務 大鐘和弘氏2025年7月14日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 三重県2025年7月14日
-
【注意報】イネカメムシ 県内全域で多発のおそれ 鳥取県2025年7月14日
-
主食用米の在庫なし、農機の修理・メンテナンス年3000件 JA常総ひかり2025年7月14日
-
【'25新組合長に聞く】JA岡山(岡山) 三宅雅之氏(6/27就任) 地域を元気にするのが農協の役割2025年7月14日
-
JA全農ひろしまとJA尾道市、ジュンテンドーと 売買基本契約を締結、協業開始2025年7月14日
-
蒜山とうもろこしの宣伝強化 瀬戸内かきがらアグリ事業も開始 JA全農おかやま2025年7月14日
-
酪農の輪 プロジェクト 夏休み親子で「オンライン牧場体験」開催 協同乳業2025年7月14日
-
大阪府泉北郡に「JAファーマーズ忠岡」新規開店 JA全農2025年7月14日
-
食農と宇宙をつなぐイベント あぐラボとMUGENLABO UNIVERSEが共催2025年7月14日
-
岩手県産のお肉が送料負担なし「いわちく販売会」開催中 JAタウン2025年7月14日
-
【今川直人・農協の核心】全中再興(2)2025年7月14日
-
「とちぎ和牛」が7年ぶりに全国最高位 "名誉賞"獲得 「第27回全農肉牛枝肉共励会」2025年7月14日
-
【役員人事】北興化学工業(9月1日付)2025年7月14日
-
第148回秋田県種苗交換会キャッチフレーズ決定 全国906作品から選出2025年7月14日
-
無料でブルーベリー食べ放題 山形・鶴岡の月山高原で地域活性イベント開催2025年7月14日
-
農地調査AI支援サービス「圃場DX」デジタル庁「技術カタログ」に掲載 LAND INSIGHT2025年7月14日
-
クマ対策用電気さく線「ブルーキングワイヤー」販売を本格化 未来のアグリ2025年7月14日
-
屋外作業の暑さ対策製品など展示「第11回 猛暑対策展」に出展 サンコー2025年7月14日