「世界透明性フォーラム2024」野心的な気候変動対策の推進に向けて FAO2024年5月21日
2015年にパリ協定で採択された目標達成に向けて、各国の温室効果ガス排出量の開示やモニタリング等を積極的に進める「透明性の向上」が重要となることから、「世界透明性フォーラム(Global Transparency Forum)」が5月20日~21日に東京で開催。170人を超える政府関係者、専門家、国際機関の代表が一堂に会し、透明性向上に向けての協力を強化し、野心的な気候変動対策を推進することを目指す。
気候変動に関する透明性を確保するため、各国は国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に隔年透明性報告書(BTR)を提出する必要がある。この報告書には、それぞれの国の温室効果ガスの排出量と吸収量に加え、いわゆる排出削減目標である「国が決定する貢献(NDC)」の達成に向けた進捗状況や、気候変動適応策、目標達成のための資金の提供・受領・ニーズなど気候に関連する最新の情報が含まれる。
BTRは、パリ協定の「強化された透明性枠組み(ETF)」の重要な構成要素で、最初の提出期限は2024年末となる。さらに、各国は2025年2月末までに、農業や土地利用等を含むすべての分野の温室効果ガス排出量を網羅した、より野心的な新たなNDCを提出する必要がある。
同フォーラム期間中の5月20日(日本時間)には、「NDCの野心強化における透明性の重要性」に関するハイレベル対話が行われ、提出が必要な上記2つの報告書(BTRとNDC)について話し合いを実施。この対話では、2つの報告書の関連性と、将来の野心的な気候変動対策への貢献を確かなものとする上で、包括的なBTRがいかに重要であるかが説明される。
国際連合食糧農業機関(FAO)は、この対話において、特に農業・土地利用分野における各国の気候関連の報告・計画を支援するために開発された最新のツールや知見を提供。また、ETFの報告に対応するために各国が必要とする組織的・技術的能力をいかにして強化していくのか、他機関との連携を強化するためにどのような支援が利用できるのか等について、各国に情報を提供する。
強化された透明性枠組み(ETF)
ETFはパリ協定の不可欠な要素の一つで、各国の温室効果ガス排出削減等の目標や公約の達成に向けた進捗を定期的に測定し見守るモニタリングを可能にする。これを実施することで、国家間の相互信頼や、目標達成に向けた責任が醸成される。
ETFを構成するBTRは、「グローバル・ストックテイク」の基礎となる。「グローバル・ストックテイク」は、進捗状況とインパクトに関する世界的な対話で、5年ごとに開催。パリ協定の目的達成に向けた世界全体の進展を評価する重要な機会で、第1回目は2023年に開催された。
農業および土地利用、土地利用変化、林業の分野は、世界の温室効果ガス純排出量の約4分の1を占めるが、これらの分野は、各国の温室効果ガスインベントリ(温室効果ガス排出・吸収量)に十分な報告がなされていない。国レベルでのデータが足りないこと、正確な報告に必要な技術が不十分であること、関係当局の関与が限定的であること等が理由となる。
FAO気候変動・生物多様性・環境部のカベー・ザヘディ部長は「気候変動対策に向けた行動における透明性は、国家間の信頼を築くだけでなく、温室効果ガス排出削減に向けた貢献を達成し、さらに上回るという集団的な野心をも後押しする。BTRから得られる知見は、国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)において、より野心的で効果的な気候変動に対する政策の策定や、その後の気候変動対策に向けた行動につながる」とコメントしている。
FAOは、加盟国の能力強化を通じて、各国が実施する農業・土地利用分野における温室効果ガス排出量の報告やNDCの達成を支援する主要機関のひとつ。この支援により、FAOの加盟国は、持続可能で気候に適合した農業・食料システムへの変革を手掛けるために必要な情報を、収集することができるようになる。
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