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「アグリテックレポート 食料安全保障と環境問題の観点から」公表 NEDO2024年7月5日

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国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、5月に成立した「食料・農業・農村基本法」一部改正を機に、農業を取り巻く世界の現状と、アグリテック(農業に関わる技術)に関する世界の開発動向を調査分析し、まとめた「アグリテックレポート ~食料安全保障と環境問題の観点から~」を公表した。

調査の結果、特定国への肥料の依存リスクを軽減するバイオ系肥料への注目が高まっていることが判明。また、欧米ではデータ駆動型精密農業の中核となる精密農業支援システムを巡って、農業関連データを保有する大手農薬・肥料メーカーと、人工知能(AI)やデータ管理・解析技術を強みとする大手IT企業とが連携し営農プラットフォーマーを目指す動きがみられることなどが明らかになった。

同レポートではNEDOに関係するアグリテックとして、(1)肥料、(2)精密農業関連技術、(3)環境制御型農業(CEA)の三つの技術に着目した。

(1)肥料
EUのFarm to Fork戦略における環境対応としての化学肥料削減の観点と、特定国への依存リスク軽減という観点から、欧州を中心に海藻や微生物などの天然由来の資材を使用した環境負荷の少ないバイオ系肥料(バイオスティミュラント、バイオ炭)の研究開発が推進されている。他方、窒素系肥料についても製造時に二酸化炭素(CO2)排出の少ない低炭素窒素系肥料の開発も進められている。

図1:肥料輸出国Top10(2022年) 出典:Fertilizer industry worldwide(Statista)を基にNEDOイノベーション戦略センター作成)

図1:肥料輸出国Top10(2022年) 出典:Fertilizer industry worldwide(Statista)を基にNEDOイノベーション戦略センター作成)

(2)精密農業関連技術
農薬、肥料などの投入量を節減しつつ最大の収量確保を可能とする精密農業への転換を目的に、その中核をなす精密農業支援システムはセンシング技術の進化やAI技術の導入により、さらなる精度向上が可能となりつつある。精密農業支援システムは大手農薬・肥料メーカーの主導で開発が進んできたが、近年はスタートアップ、農機メーカー、さらには大手のIT企業も参入。立場の異なるプレーヤーが互いに技術やデータを補完し合い、合従連衡をしながら、プラットフォーマーを目指す動きが出てきていると見られる。

図2:国際農業機器展FIMA2024でのバイオスティミュラントの展示(FIMA2024撮影)

図2:国際農業機器展FIMA2024でのバイオスティミュラントの展示(FIMA2024撮影)

(3)環境制御型農業(CEA)
保護・管理された屋内環境で作物を栽培するCEAについて、米国では食料調達の強靭化と農業の脱炭素への寄与も期待され多大な投資が行われている。イチゴのような高付加価値の食物について量産に成功する事例も見られ、さらなる市場の拡大が期待される。

コロナパンデミック、異常気象、ロシアによるウクライナ侵略などの影響により、2020年以降、食料価格は高騰し、途上国では飢饉が広まるなど、世界はさまざまな食料サプライチェーンの課題に直面した。世界の人口は増え続けており、食料需要が増加の一途をたどる中、食料需給を中心とした食料安全保障は日本のみならずグローバルな喫緊の課題となってる。

一方、農業は環境への対応も迫られている。生態系に与える農薬の影響や肥料の自然界への流出による地下水や河川の汚染問題、さらに、世界がカーボンニュートラルを目指す中、農業分野での温室効果ガスの排出削減も求められ、環境に配慮した持続可能な農業への転換が不可欠となっている。

図3:精密農業支援システムを巡るプレーヤーの動向(出典:各種報道よりNEDOイノベーション戦略センター作成)

図3:精密農業支援システムを巡るプレーヤーの動向(出典:各種報道よりNEDOイノベーション戦略センター作成)

日本では5月29日、「食料・農業・農村基本法」の一部を改正する法案が国会で成立。改正のポイントは、食料安全保障の強化と環境問題に対応した農業への転換に加え、農業の持続的発展のための生産性の向上などが挙げられる。

同レポートは、農業を取り巻く世界の現状について述べ、また、農業に関わる国際合意と欧米の農業関連政策等にも触れつつ、アグリテックが食料安全保障と環境問題の課題解決にいかに寄与できるのかという観点で、技術動向についてまとめている。

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