東日本のカシノナガキクイムシの由来を遺伝情報により解明 森林総合研究所2024年11月29日
森林研究・整備機構森林総合研究所、宇都宮大学、青森県産業技術センター、北海道立総合研究機構森林研究本部林業試験場の研究グループは、東日本のナラ枯れの被害域拡大を引き起こしているカシノナガキクイムシの由来を遺伝情報から明らかにした。
図1:A青森県のナラ枯れ被害地、
Bカシノナガキクイムシ、 C東日本におけるナラ枯れ被害域の拡大
ナラ類、シイ・カシ類などが集団で枯死するナラ枯れ(図1.A)が全国各地で発生している。これは、カシノナガキクイムシという小さな昆虫(図1.B)が大発生して樹木の幹に多数穿孔し、この虫が媒介するナラ菌と呼ばれる菌によって樹木が枯死するもの。
ナラ枯れによって、貴重な森林資源が広範囲にわたって失われるとともに、生態系を変化させる結果となっている。
同研究では、東日本各地から採集したカシノナガキクイムシ165個体からDNAを抽出し、多数の遺伝子座の塩基配列を解読した。塩基配列のデータから東日本のカシノナガキクイムシは、少なくとも3つの遺伝的に異なるグループに分けられることが明らかになった(図2)。このことから、近年のナラ枯れ被害の拡大をもたらしているカシノナガキクイムシの由来は単一ではないことがわかった。
3つの遺伝的に異なるグループの分布を見ると、北海道南端部、岩手県太平洋沿岸、関東平野など、最近ナラ枯れ被害が新たに生じた地点では、その近隣の既存被害地と遺伝的に同じグループのカシノナガキクイムシが被害の原因となっていた。このことから、東日本において近年新たに発生した被害の多くは、隣県などの近隣の既存の被害地からカシノナガキクイムシが移住することにより被害地拡大が起きた結果である可能性がある。
また、東北地方に2つの遺伝的グループが分布していることがわかったが、これらは祖先集団から別々の時期に分岐したあと、分布域を拡大するなかで交錯し、一部地域では交配した集団があることも明らかになった(図3)。
同研究は、カシノナガキクイムシの分布拡大が近年のナラ枯れ被害域の拡大を引き起こしている可能性を示唆。このことは、森林被害の拡大の過程を理解する上で重要な知見となる。
図3:推定された過去の集団動態のモデル図
同研究成果は10月3日、『InsectSystematicsandDiversity』誌でオンライン公開された。
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