原発事故被災者応援金報告会 組合員募金を活用した3団体が報告 パルシステム連合会2025年1月15日
パルシステム連合会は1月9日、「東京電力福島第一原子力発電所事故被災者応援金」の2023年度助成団体活動報告会をオンラインで開催。助成したうち3団体が、避難者の心のケアや居場所づくり、事故を風化させない情報発信などの活動を報告し、いまだ復興が終わっていない現地の実情を伝えた。
今回報告したのは、市民団体ごえんのちから(横浜市旭区)、NPO法人フュージョン社会力創造パートナーズ(つくば市千現)、モニタリングポストの継続配置を求める市民の会・三春(福島県田村郡)の3団体。それぞれ、助成金の使途と活動内容について紹介した。
市民団体ごえんのちからは、福島県南相馬市を中心に県内各地を訪問し、地元の人々と交流する「被災地交流ツアー」を開催。これまで73回開催し、1千人以上が参加した。原発事故の影響で県内ではいまも、修学旅行先として選ばれなかったり、生産した米が売れなかったりする風評被害が続いている。
ツアーでは、現地を見て、話を聞き、会話を重ねることで、参加者の理解を深めている。参加者の半数が複数回参加するリピーターになっており、移動手段のバスはこれまで、代表の須摩修一さん自らバスを運転していた。須摩さんが今春、運転免許を返納するため、今後はバスをチャーターしなければならず、開催経費の上昇が見込まれている。
須摩さんは「足を運ばなければ分からない実態がある。県内に住む人はみな『来てほしい』『見てほしい』と口をそろえます。原発事故の教訓を将来に生かすため、これからも付き添っていきたい」と抱負を語った。
NPO法人フュージョン社会力創造パートナーズは、茨城県へ避難した人々が孤立しないよう、スイーツ教室やいちご狩りなどのイベントを開催。参加者からは「地元の言葉が聞けてうれしい」などの感想が集まるという。
茨城県は、福島県からの避難者が最も多い県で、いまも多くの人が避難生活を送っている。事故から14年が経過し、避難先の生活に慣れて子どもの独立などで家族構成は変化。くらしは落ち着いているが、福島県内に残した家屋の解体にサインできず、住民票の移動をためらう人は少なくない。
同法人の武田直樹理事長は「笑顔ばかりのイベント中でも、ときおり見せる寂しい表情や弱音に触れることがある。避難者の事情は1人ひとりそれぞれ。彼らのセーフティーネットを維持するためにも、楽しく笑って過ごせる時間を作っていきたい」と語った。
モニタリングポストの継続配置を求める市民の会・三春は、避難生活が続く人たちが自身の思いを語るイベント「おらもしゃべってみっか」の開催を定期的に続けている。参加者が語りやすくするため通常は少人数、非公開で実施。イベントに参加した被災した人のなかには、話を聞くうちに泣き出し、退出してしまう人もいるという。
同会の大河原さき共同代表は「避難する人の多くが『風化させたくない、だけど思い出したくない』という複雑な気持ちを抱えている。その思いを広く伝えるため、今年は6月に公開版を開催する」と話した。
福島県三春町は事故当時、放射性ヨウ素による甲状腺への被ばくを低減する安定ヨウ素剤を独自の判断で住民に配布。安定ヨウ素の配布をめぐっては、事故直後の混乱から情報の把握や伝達が機能せず、ほとんどの地域で備蓄品を活用できなかった。会では今後も、事故の教訓を伝える活動を続けていく予定。
質疑では、今後の課題として3団体とも「資金繰り」を挙げ、被災した地域が先細りする支援によって被災した人々が取り残されつつある実態が浮き彫りとなった。県内メディアでの報道も減っており、事故の記憶の風化を懸念している。
助成金運用管理委員会の楊直子委員長(パルシステム連合会平和・地域活動委員会副委員長、パルシステム神奈川常任理事)は「復興しているようにもみえるが、住民の不安はぬぐえず課題は山積。助成団体はいずれも、被災者に寄り添い募金を有効活用している。必要性を理解し、今後も支援してください」と呼びかけた。
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