一括入札で単価抑える 学校給食への有機野菜導入で 一部報道が波紋2025年3月5日
品川区が、学校給食への有機野菜導入にあたって、「学校ごとの随意契約」から「一括での入札」に切り替えることで野菜代の節約を図ろうとしている。そんな「東京新聞」の報道が波紋を広げている。
一括入札で野菜代を「節約」と報道
東京都品川区は10月から、区内公立小中46校で、給食で使う野菜を有機農産物・特別栽培農産物に切り替える。都内初の注目施策だ。
「東京新聞」2月26日付(ネット版は2月25日19時02分アップ)は「オーガニック化契機に一括入札へ 給食の野菜代 節約大作戦」の見出しで、「品川区は、全小中学校46校で使う野菜を一括して入札にかけることで、1食当たりの費用を抑えられるとしている」とし、「費用を抑える努力が求められている」という区幹部のコメントも載せた。
「より安心・安全な給食」めざし
品川区が導入を決めた「学校給食における有機農産物等活用推進事業」は、2025年10月から、区立学校の給食で、すべての野菜について有機農産物、特別栽培農産物を利用するというもので、そのための予算に約2827万円計上した。それにより「より安心・安全な学校給食を実現し、児童・生徒の健康を増進」する。同区では、23年4月から区立学校給食を無償化しており、保護者の負担は生じない。
一括調達への疑問も
東京新聞の前記記事によると、公立小中学校では学校ごとに保護者から給食費を集め、地元業者などから随意契約で食材を買ってきた。ここ数年、学校給食を無償化する自治体が増えてきたが、「税金で食材を買うようになったが、学校ごとに随意契約を結ぶ慣例は今も続いている」という。
税金が原資なら効率性が求められるが、有機農業は慣行農業より手間がかかり、その分が価格に反映する必要もある。入札で価格だけを重視すると買い叩きにつながりかねない。
記事に対し、首都圏のあるJAの担当者は「品川区の学校全部に食材を一括納入できる業者はいくつもないだろう。応札する業者が1社しかなければ、かえって高くつくこともありえる」と首を傾げる。SNS上にも「こんなことできるんですか? 有機農産物で」「一括購入前提なら小ロットが多くて品質の安定が難しい有機野菜を選ぶメリットが下がる」「対応できる事業者がどんだけいるのか」など、疑問の声が並んだ。
茨城県常陸大宮市は随意契約
他の自治体ではどうか。2022年度から学校給食に有機農産物を採り入れ、23年には「オーガニック・ビレッジ宣言」を発した茨城県常陸大宮市では、JA常陸との随意契約で食材を調達している。価格の決め方について市は、「価格決定はJAにお願いしている。JAが農家や市場関係者から聴き取りをし、市況や相対取引価格を参考に適正な価格を決めている」(農村振興課農政グループ)と説明。JA常陸は「1~2ヵ月前に見積もりをとって市側に概算を出し、それにもとづいて発注がきて納品する。月1回、給食センターとの会議を持ち、予算も考えながら決めている」(大宮営農経済センター)と話す。
品川区に問うと「決まっていない」
入札導入の趣旨と懸念について品川区に質問したところ、「事業を実施するにあたっては、内容とともに経費も考慮する必要があります」とした上で、「区の予算(公金)による食材調達のため、入札も一つの契約方法ですが、現時点で決まっているものではありません。今後、本事業の具体の内容・手法等について検討を進めていくこととしています」(戦略広報課)とのことだった。
要は具体的なことはまだ決まっていないというのだが、前記記事には「東京都品川区の区立学校給食1食当たりの単価」を「一括購入による入札をした場合」と「しなかった場合」で比べたグラフも載っており、単価の試算を含め検討を進めているのではないかと思われる(中学生の給食の場合、有機農産物などを導入する10月以降、これまで通りだと1食510円かかる単価が一括入札をすると437円に下がる、という)。
合理的な価格形成、学校給食の食材調達でも
「合理的な価格形成」は農政の重要な課題だ。政府の「骨太の方針2024」でも「原材料費、労務費等を考慮した合理的な価格形成がなされるよう、官民協議の下、コスト指標を早期に示すほか、新たな法制度について、2025年通常国会への提出を目指す」とされている。
地域の農家にとって学校給食はかなり大口の需要になる。JA組合員でもある市内の農家が作った有機農産物をJAを通じて市が買う常陸大宮市と、区内に農家が少ない品川区とでは置かれた状況がかなり違う。とはいえ、給食の食材調達にあたっては、合理的な値決めを通じ、適正な代価が農家に渡るよう関係自治体の配慮が求められる。
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