パルシステム生消協 第36回通常総会とフォーラム開催 全国170の産地から生産者が集合2025年3月13日
パルシステムと産直提携を結ぶ産地の生産者と生協利用者でつくるパルシステム生産者・消費者協議会(生消協)は3月5日、第36回通常総会を東京・千代田区の有楽町朝日ホールで開催。続いて開かれたフォーラムでは、生産者が気候変動による猛暑などの影響と対策を報告した。
パルシステムの2025年度新体制一同
総会は、産直提携を結ぶ産地の生産者や組合員、パルシステムグループ役職員など342人が出席し、「2024年度活動報告並びに決算報告・監査報告承認の件」「2025年度活動方針並びに予算案承認の件」「役員改選の件」の3議案が賛成多数で承認された。質疑応答では、生消協とパルシステム連合会の共催により開催した「第1回オーガニック技術交流会議」の拡大や、若い組合員の関心を高めるSNSの活用などについて意見が挙がった。
小川保代表幹事(茨城県・JAつくば市谷田部)は、「物価高により生産者、消費者、職員ともに厳しい状況が続いている。生産者と消費者が互いに敬意を表しながら活動できれば」とあいさつ。来賓として参加したパルシステム連合会・大信政一理事長は「生産者のみなさんと会えることを喜ばしく思います。国際情勢、自然災害、気候変動などさまざまな課題を乗り越えていけるよう、生産者と消費者が連帯し、ともに乗り越えていきましょう」と呼びかけた。
また、パルシステム協力会の安田昌樹会長(北海道漁業協同組合連合会)は「生産・流通・消費それぞれの立場がお互いを尊重し、自発的に自らの責任を果たす社会が望ましい。多くの人が相互に理解し合うことを願いたい。それぞれの事業発展を祈念します」と語った。
総会後は、フォーラム「気候変動による影響と未来にむけて取り組むべきこと」を開催。パネリストとして米・ミニトマト・柑橘・牛肉・鶏卵の生産者5人が登壇し、気候変動による影響と対策を報告した。
総会後に開かれたフォーラム
米を生産する工藤猛さん(大潟村産直会オーリア21代表)は、猛暑により基準を満たした一等米の比率が大きく低下している生産状況を報告。水を張らない乾いた田んぼに直接稲の種をまく「乾田直播」の導入によるリスク分散や、冷害には強いものの高温の耐性が低い「あきたこまち」から高温に強い「サキホコレ」など他品種への切り替えを検討していることを伝えた。
ミニトマトを生産する椎名正和さん(農事組合法人村悟空ミニトマト部会長)は、猛暑による生育不良や病害虫被害を報告。高温に強い品種の導入や定植時期の変更、ハウスに外気を取り込むシステムの導入などさまざまな対策を講じても効果が上がらなかった苦労を語った。
また、柑橘類を生産する宇都宮幸博さん(農事組合法人無茶々園代表理事)は、暖冬により大量発生したカメムシやイノシシなどの害獣の被害状況を報告。加工を目的として栽培するため表面に傷が付いても問題のないレモンや高温耐性のあるポンカンなどの栽培転換と、害獣対策として講じられた電柵と鉄筋柵の設置についても説明した。
牛肉を生産する宮北輝さん(ノーザンび~ふ産直協議会、合名会社宮北牧場代表)は、高温により生息域が北上したマダニが牛に寄生し、貧血や流産を引き起こす「ピロプラズマ病」の被害を報告した。低温と日照不足により飼料のトウモロコシが生育不良となる影響も受けたが、水田を利用することで水源および粗飼料の確保に努めている。できるだけ飼料を自給し、地域の資源循環に取り組む姿勢を語った。
さらに、鶏卵を生産する梅原正一さん(株式会社菜の花エッグ代表取締役)は、猛暑による食欲不振で引き起こされる卵重の低下、さらに飼料価格の高騰や台風などの自然災害による被害を報告。高病原性鳥インフルエンザの流行により生産量が低下するなか、再生可能エネルギーの使用率向上を目指し導入している太陽光発電などの取り組みを発表した。
質疑応答の時間には、厳しい状況の中でも安心安全な食材を届けるため尽力する生産者へ、消費者から感謝の言葉が伝えられた。会場の果樹農家からは、生産品の価格高騰は農家の事業継続にはやむを得ないという背景の説明や、SNSを活用した産地の広報活動について意見があった。
閉会にあたり、登壇者は会場の生産者に向けて「お互いに新しい技術は共有して盛り上げていきましょう」「各産地で抱えている課題は異なりますが、職員や組合員と共有しながら改善し、成長していきましょう」と呼びかけた。また、消費者に向けては「環境問題は生産者だけでなく消費者もCO2削減に取り組むことが、将来の地球環境を守ることにつながる」「一人ひとりが気候変動について考え、持続可能な産業を次世代につないでいくことが大事」とメッセージを送った。
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