「食料・農業・農村基本計画」へ生協6グループが提言 安心して生産できる環境整備を2025年3月31日
政府が改定を進めている「食料・農業・農村基本計画」に対し、国内で活動する生活協同組合6グループは3月27日、提言を発表。産直を続ける消費者の立場から、持続可能な農業に必要な政策を求める。また、意見交換会「農業を守るために、消費者・生産者の声を反映させましょう!」を開き、国会議員や農林水産省を交え今後の農政のあり方を議論した。
提言書を受け取る河村課長(中央右)と生協6グループの代表者など
提言は、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会、東都生活協同組合、生活協同組合連合会コープ自然派事業連合、生活協同組合連合会アイチョイス、グリーンコープ生活協同組合連合会、パルシステム生活協同組合連合会の6グループが共同でとりまとめた。
主に食料自給率向上、価格政策、環境保全、安全性確保と表示制度、農村振興の5項目で構成し、食料生産の強化や担い手確保、有機農業の推進などの施策実現を求める。昨年夏からの米価格高騰など、食料確保へのさまざまな課題が顕在化するなか、消費者が安心して国産農作物を購入でき、生産者が安定して生活できる持続可能な農業の実現するための施策を盛り込んだ。
提言にあたり6グループの代表が同日、農林水産省を訪問し、大臣官房政策課の河村仁課長へ提言書を手渡した。河村課長は「生協は農業生産物を販売するだけでなく、自ら生産者との連携を実践している。本計画案とみなさんの考えは、大きな方向性の違いはないと考える。生産者、消費者、政府が一緒になって農業と農村の振興を果たしましょう」と述べた。
意見交換会は、会場とオンラインをあわせて約300人が参加。与野党から多くの国会議員も来場し、持続可能な農政実現へそれぞれ抱負を語った。
主催者を代表してあいさつした村上彰一・生活クラブ事業連合生活協同組合連合会会長は「国際情勢が不安定さを増している。人口が減少する日本は、将来的に十分な食料を調達できなくなる事態が懸念される。提言を反映し、持続可能で食料の自給を実現する政策が必要」と提起した。
提言の説明後、消費者と生産者がそれぞれの立場から発言し、農林水産省の担当者から計画案の説明があった。
消費者としてパルシステム生産者・消費者協議会副代表幹事の渡部さと子さん(パルシステム神奈川理事)は「おいしいものを食べるには、生産するみなさんがいてこそ可能。改定される計画が、生産者と消費者が問題解決に向けて力を合わせるような、距離を縮めることにつながれば、生産地域や食のあり方を変える転機になるのでは」と訴えた。
また、生産者を代表して意見表明した紀ノ川農協副組合長理事の西野文敏さんは「この数年、異常気象で果実の落下や日焼け、害虫被害などが増え、安定供給が困難になってきている。需要にこたえる供給を実現するため、伴走型支援による新しい担い手の育成や、事故防止策の充実などを基本計画に盛り込んでください」と訴えた。
提言要旨は次の通り。
1.食料自給率目標の明示と実現に向けた対策を求めます
(1)農業の多面的機能を発揮し、脱炭素を推進するために食料自給率の向上が必要です
(2)食料自給率向上に向けた抜本的な対策の強化を求めます
(3)100%自給可能な水稲の生産基盤強化を求めます
(4)食料自給率向上には担い手の確保が必要です
2.国内農業、生産者を保護するための適正な価格形成について
(1)農業分野における財政支援を求めます
(2)農業生産者と消費者が対立しない価格政策の実現を求めます
(3)再生産可能な価格の設定と維持に向けた政策を求めます
(4)農業生産現場における長時間労働、低収入から脱却できる仕組みづくりを求めます
3.環境保全型農業、みどりの食料システム戦略について
(1)自然循環を生かした安全でおいしい食べものづくりの推進が必要です
(2)環境への取り組みと、資源循環型農業(未利用資源の活用)の推進を求めます
(3)みどりの食料システム戦略を農業政策に位置付けた持続可能な農業の推進を求めます
(4)有機農業・環境保全型農業の推進と学校給食への活用を求めます
4.消費者の立場に立った食品安全などに関わる規制と表示、食料の安全確保の強化について
(1)食品安全・食品表示に係る制度・政策について、食品表示法の基本理念に則って検討することを求めます
①加工食品の原料原産地表示制度の見直しを求めます
②遺伝子操作(遺伝子組換え、ゲノム編集)食品の表示制度の見直しを求めます
5.農村政策について
(1)多様な農業形態、担い手の確保と気候風土に適った地域農業の育成を求めます
(2)農村のインフラや環境の維持管理を行うための役割を担う人材の構築を求めます
(3)関係人口を増やす都市と農村の交流や活動支援を求めます
(4)家族農業への支援を求めます
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