流通:安全な食とは
第10回 清涼飲料水で肥満・糖尿病2013年4月27日
・コンビニの目玉商品・清涼飲料水
・異性化糖を取り続けるとメタボに
・異性化糖の原料は米国産トウモロコシ
・TPPでコーンスターチが席巻し砂糖産業崩壊
コンビニに入ると、清涼飲料水は必ずといっていいほど一番奥におかれています。なぜ一番奥かというと、コンビニの利用者として、多数を占める若者たちの多くが、清涼飲料水購入を目的に店に入ってくるからです。
◆コンビニの目玉商品・清涼飲料水
一番奥のスペースを目的買いゾーンといいます。入店した人の多くがそこを目指して進みます。通常、入り口から右回りで一周する形で進み、最後は出口近くにあるレジで精算して出ていきます。このグルッと回る導線沿いに、衝動買いを誘う商品が置かれています。そのため清涼飲料水は、コンビニの目玉商品ということができます。
その清涼飲料水は種類が増え、それに用いられる食品添加物も、種類が増え中身も大きく変わりました。もっとも使われているのが、甘くする添加物です。以前は、甘味をもたらすものというと砂糖が主でしたが、いまはほとんどがコーンスターチから作られる「ブドウ糖果糖液糖」です。
◆異性化糖を取り続けるとメタボに
かつてペットボトル症候群という言葉がありました。甘くした清涼飲料水を一度に大量に飲むと、急性糖尿病になるという現象を指したものです。その原因となっていると指摘されたのが、このブドウ糖果糖液糖です。
このブドウ糖果糖液糖のようなものを異性化糖といいます。2010年3月22日付「ニュース・オブ・プリンストン」で、米国プリンストン大学のヒラリー・パーカーらの研究チームが行った2つの動物実験が紹介されました。
1つは、異性化糖を与えたマウスと、砂糖を与えたマウスでは、前者の方が体重が異常に増えるという結果です。もう1つでは、異性化糖を6カ月間摂取し続けると、メタボリック・シンドロームと呼ばれる状態が起きるという結果です。今後、同研究チームは、ハンバーガーなどの高脂肪食と異性化糖との相乗作用について調査するそうです。
また最近発表された、南カリフォルニア大学などの研究者が報告した論文では、異性化糖を多く食べている国民と、砂糖を多く食べている国民では、前者の方が糖尿病が多いという結果が出ました。この論文では、43カ国が調査対象となりました。米国のように異性化糖が多い国とヨーロッパの多くの国のようにほとんど異性化糖を摂取していない国が比較されました。
◆異性化糖の原料は米国産トウモロコシ
公衆衛生の研究者などで構成されている世界ネットワークの「GBMRF」のデータでは、異性化糖を多く摂取している国民での糖尿病の割合が8.2%、砂糖を多く摂取している国民が6.9%でした。
国際糖尿病連合でのデータでは、異性化糖を多く摂取している国民での糖尿病の割合が7.7%、砂糖を多く摂取している国民が6.4%で、いずれも約20%、糖尿病の割合が高いという結果になったのです。なぜヨーロッパで異性化糖が用いられていないかというと、EU域内の砂糖生産を保護しているためです。
ではなぜ異性化糖が、増えてきたのでしょうか。最も大きな理由は砂糖に比べて3割近く安いからです。異性化糖は英語で「コーンシロップ」といいますが、現在、異性化糖の原料として用いられているのは、大半がコーンスターチです。そのコーンスターチに用いるトウモロコシのほぼ100%米国から輸入されています。でん粉の需要先の3分の2が、清涼飲料水などの糖化製品です 。
なぜ、異性化糖が肥満や糖尿病の原因となるのでしょうか。ブドウ糖と果糖が分かれて存在しているため、すぐに吸収され、急激な血糖値の上昇をもたらし、インシュリンの分泌にも影響を及ぼし、糖尿病の引き金になると見られています。果糖も早く吸収されるため、脂肪に回りやすく肥満になりやすいのです。
◆TPPでコーンスターチが席巻し砂糖産業崩壊
日本人は主に、主食であるお米からブドウ糖を得ています。お米からの場合、ゆっくり消化され、エネルギー源となるため、血糖値が急激に上がることはありません。果物に含まれる果糖も同様で、ゆっくり消化されるため脂肪の蓄積も抑えられると見られています。
現在、砂糖価格やでん粉価格は、国内産が不利となっているため、「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」があり、それにより安価な輸入品から徴収した調整金を財源に、国産品の生産者や事業者に交付金を交付して、価格競争に耐えられるようにしています。日本がTPP(環太平洋経済連携協定)に参加すると、砂糖が自由化され、日本の砂糖産業が崩壊するだけでなく、安価な米国産コーンスターチに席巻されることを意味します。それは、日本人の健康問題にもつながるのです。
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