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流通:安全な食とは

第11回 スピードアップされる食品添加物の承認2013年5月22日

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【天笠啓祐 / 市民バイオテクノロジー情報室代表】

・安全評価されず承認される「国際汎用食品添加物」
・国際的な統一を求めたWTO
・シアン使った食品添加物も承認
・国民の健康より貿易自由化を優先

 2013年5月15日、厚労省によって新たに「硫酸カリウム」「乳酸カリウム」の2つが食品添加物として認められました。これにより「指定食品添加物」は今年になり4つが加わり、10年前は400品目もなかった指定食品添加物が、あっという間に434品目まで増えてしまったのです。

◆安全評価されず承認される「国際汎用食品添加物」

  指定食品添加物とは、化学合成添加物で厚労大臣が使用を認めたもののことです。このところ急ピッチで新たな食品添加物の承認が進められています。
 なぜこのように、急ピッチで認められるようになったかというと、それこそ貿易自由化促進の流れであり、現在ではTPP参加を睨んで進められている、ということができます。この硫酸カリウムと乳酸カリウムは、いずれも「国際汎用食品添加物」と呼ばれるもので、問題は、この安全性評価もまともに行われないまま、次々に日本政府が承認している国際汎用添加物にあります。
 この国際汎用添加物は、貿易の自由化・促進のために、それまで各国ごとで行われていた安全性評価や承認を、国際統一化しようという流れの中で登場しました。なぜ各国ごとに安全性が評価され、承認されてきたかというと、それぞれの国で食文化が異なり、摂取する食品の種類や摂取量が異なるからです。
 しかし、そのことは貿易促進には都合が悪いのです。ある国で認めているのに、他の国では認めていないものが多くなり、食品の輸出入ができなくなるためです。そこで国際統一化を進める動きが強まりました。いわば欧米で認めているものは、日本でもどんどん認めるべきだということで、リストアップされ、認められてきた添加物です。

◆国際的な統一を求めたWTO

 この動きは、1995年にWTO(世界貿易機関)が設立されたのをきっかけに始まりました。WTOは、食品の規格や基準、表示や安全性評価などを国際的に統一化することを求めました。各国ごとにばらばらな状態が貿易障壁に当たると考えたからです。WTOはその際、統一化にはコーデックス(CODEX)の規格や基準等を採用するとしました。
 コーデックスとは、国連のFAO(食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の共通の下部機関で、食品にかんするさまざまな規格や基準などを決めています。有機食品の国際規格や遺伝子組み換え食品の安全性評価の国際基準なども決めてきました。
 そのコーデックスには「食品添加物に関するコーデックス一般規格」があります。世界各国が、この規格に基づいて食品添加物を認めることが求められるようになりました。

◆シアン使った食品添加物も承認

 日本政府がこれを受け、「国際汎用食品添加物」を指定し、承認を急ぎ始めたのは、2002年からです。この年、中国産食塩から、日本では未承認の食品添加物「フェロシアン化化合物」が検出されたことによります。
 この食品添加物は、塩が水分を含むとべたついてくるため、それを防いでサラサラの状態を維持するのに用いたものです。欧米では塩漬け食品などによく用いているが、日本では認めてきませんでした。それは猛毒物質のシアンが用いられているからで、フェロシアン化化合物も、化学変化を起こすと毒性が強まることが分かっているからでした。
 この中国産食塩に対して厚労省は厳しく取り締まることをせず、むしろ承認を急ぐ形で決着を図りました。
 この事件をきっかけに、厚労省は国際汎用食品添加物「46品目」を選び、承認を急ぐことにしたのです。各国ごとに評価することが、これにより放棄されたのです。これ以降、まともに安全性評価が行われないまま、次々と新たな食品添加物が認められるようになりました。
 すでに承認された中には、食品衛生法によって「原則認めない」としている抗生物質の「ナイシン」や「ナタマイシン」も含まれています。

◆国民の健康より貿易自由化を優先

 しかし、この承認スピードに対しても、米国政府などは、まだ遅いといって批判を行ってきました。そのためTPP参加が現実化する中で、厚労省はさらに承認をスピードアップするために、政府による規制・制度改革に係る方針(2011年4月8日閣議決定)に基づき「食品添加物の指定手続の簡素化・迅速化」措置を決めたのです。垂れ流し承認体制ともいえるものが作られたのです。
 今回の承認は、そのスピードアップを受けてのものでした。まもなく「46品目」すべてが承認されることになりそうです。国民の健康より、貿易の自由化が優先された結果です。

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