流通:加工食品の原料原産地表示を考える
加工食品の原料原産地表示を考える[7]新食品表示法2013年8月1日
今回は先の通常国会で成立した食品表示法のポイントを改めて整理しておく。現行の食品表示に関係する3つの法律を一元化するのが目的とされているが、新法の目的には国内農業の振興を図る趣旨も盛り込まれている。原料原産地表示基準は今後の課題だが新法の理念を反映することが求められる。
国内農業の振興も目的
新法は現在の食品表示に関する3つの法律(食品衛生法、JAS法、健康増進法)を統合化するために制定された。食品衛生法では「衛生上の危害発生防止」、すなわち食品の安全確保を目的に表示をしていることになる。JAS法は「品質に関する適正な表示」が目的。言い換えれば「品質の差」があればその情報を表示する、といえる。本シリーズに即していえば、原料原産地の表示は、それが「品質の差」に関係するからだ、という場合に限られる、といっていいだろう。
そしてもうひとつの表示に関わる法律が健康増進法でその目的は「国民の健康の増進」だ。すなわち栄養表示である。
これを統合して食品表示を一元化しようと制定された新法では、基本理念として「消費者の権利」を明記した(第3条)。
そこでは食品表示の適正な確保は、「消費者の安全及び自主的かつ合理的な選択の機会が確保され、消費者に対し必要な情報が提供されることが消費者に権利であることを尊重する」と記されている。ここでは消費者の「知る権利」を尊重する、と明記しているいえる。現行の3つの法律がそれぞれ掲げている表示の目的も含めたうえで、消費者が必要とする情報の提供を表示制度の考え方に据えたといっていい。
その一方で、食品業界への配慮も盛り込まれ、食品表示は「小規模の食品関連事業者の事業活動に及ぼす影響等に配慮して講ぜられなければならない」としている。
ただし、新法の「目的」には消費者の利益増進だけではなく、「食品の生産の振興に寄与すること」も盛り込まれている。与党の法案審議で農業に振興を目的とすべきとの意見が出され、消費者庁も国会提出時の説明で、この「食品の生産の振興」との文言に「農業振興を含めた」と説明している。つまり、新法をもとに制度化されていくことになるわが国の食品表示は、消費者の知る権利に応えるものであるとともに、農業振興に寄与するものとなる必要があるともいえるだろう。原料原産地表示は、今後、新たな検討の場で議論が開始されるが、こうした目的を軸に検討されるべきではないか。
◇ ◇
表は新法の骨格。新法では表示違反に対して改善の指示に従わなかった場合には、行政処分(命令)が行われることや、緊急の必要があるときには、食品の回収、業務停止命令が行われる規定になっている。
また、違反調査のための立入検査も行われるほか、命令違反には罰則も規定した。食品表示基準に従った表示をしていないと認められた食品を販売した者には「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金」と直罰規定が盛り込まれた。
ただし、具体的な表示制度は、今後の検討となっている。中食・外食のアレルギー表示やインターネット販売については実態調査を実施する。遺伝子組み換え表示と食品添加物表示については、国内外の表示ルールの調査を行うことになっている。いずれも新法の目的と理念をふまえた検討が求められる。
重要な記事
最新の記事
-
【第45回農協人文化賞】人との出会いに感謝 福島県・会津よつば農協組合長 原喜代志氏2024年8月14日
-
【第45回農協人文化賞】努力する人は希望を語る 共済事業部門 鳥取県・JA鳥取西部前代表理事専務 植田秋博氏2024年8月14日
-
【第45回農協人文化賞】「なくてはならない」組織に 経済事業部門 JA岡山会長 宮武博氏2024年8月13日
-
【第45回農協人文化賞】全ては組合員のために 経済事業部門・JA全農ぐんま 前副会長 大澤孝志氏2024年8月13日
-
関東早場米も店頭5㌔2500円以上が売価に【熊野孝文・米マーケット情報】2024年8月13日
-
【第45回農協人文化賞】きのこが健康けん引確信 営農経済部門・日本きのこマイスター協会理事長 前澤憲雄氏(長野県)2024年8月10日
-
【第45回農協人文化賞】土づくりへのこだわり 営農経済部門 秋田県・JA秋田しんせい前常務 高橋徹氏2024年8月10日
-
シンとんぼ(105) -みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(15)-2024年8月10日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(22)【防除学習帖】 第261回2024年8月10日
-
土壌診断の基礎知識(31)【今さら聞けない営農情報】第261回2024年8月10日
-
【第45回農協人文化賞】「小さな協同」の実践を目指して 一般文化部門 長野・JA松本ハイランド組合長 田中均氏2024年8月9日
-
【第45回農協人文化賞】「草の根運動」とともに 一般文化部門・JA広島中央会元専務 坂本和博氏2024年8月9日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 香川県2024年8月9日
-
【注意報】果樹カメムシ類急増で被害多発のおそれ 滋賀県2024年8月9日
-
【注意報】ミニトマト、トマトにトマト黄化葉巻病 県中部で多発のおそれ 和歌山県2024年8月9日
-
【注意報】ネギ、ブロッコリー、ダイズにシロイチモジヨトウ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2024年8月9日
-
(396)首都の場所:赤道ギニア共和国【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年8月9日
-
【'24新組合長に聞く】JA碓氷安中(群馬県)戸塚勉組合長 野菜のブランド産地へ (5/31就任)2024年8月9日
-
米の品種や食味などを分析 米品質診断パッケージ、キャンペーンを実施中 サタケ2024年8月9日
-
北海道産赤肉メロンのパフェとかき氷 期間限定で登場 銀座コージーコーナー2024年8月9日