流通:時の人話題の組織
【時の人 話題の組織】雜賀慶二・東洋ライス株式会社代表取締役社長 健康効果、米で追求2013年9月20日
・専用カップを開発
・全国の量販店でも
・口コミで広がる品質
・日本の水田存続のために
・世界初の米総合メーカー
お米の消費が伸びないといわれているが、社員食堂の健康食レシピで女性層を中心に支持されているタニタとのコラボレーションで東洋ライスの金芽米が売れている。なぜいま金芽米が消費者から支持されているのか。雜賀慶二東洋ライス社長に聞いた。
タニタ食堂とのコラボで好調な金芽米
◆専用カップを開発
――主食用のコメの販売が厳しいといわれていますが、そんな中で御社の「金芽米」の売上げが好調に推移しています。その要因は何にあるとお考えですか。
「2005年に金芽米のイメージガールである荒川静香さんが冬期オリンピックで金メダルに輝き金芽米の認知度が上がりましたが、弊社の対応が遅れて必ずしもこのときは販売につながりませんでした」
「その後、金芽米の購買者から“美味しくない”というご意見をいただくようになりました。よく調べてみると、米袋に表記しているのですが、金芽米の場合は炊飯時に通常よりお米の量を9%少なくし、水は炊飯器の目盛どうりに入れて炊いていただくようにお願いしていますが、それを読まずに通常のお米と同様に炊かれるので、本来の美味しさが出ず、逆に味が落ちてしまいます。これは金芽米の特長である『亜糊粉層』は炊飯時に水を大量に吸収し、膨張する性質があるので、従来の無洗米カップなどで金芽米を計量するとかなり水不足になるからです」
「そこで、計量カップに2つの凹みをつくり、普通の計量カップより約9%お米の入る量を少なく計量できる『金芽米カップ』を開発し10年6月から配布・販売するようにしました。このカップを使うと従来よりお米の量は少ないけれど炊き上がりの重量・かさ・やわらかさは普通のご飯と変わらず美味で、経済的に得で、健康にもよいということが広く認識されるようになり、販売が着実に伸び始めました」
◆全国の量販店でも
――そして昨年の11月に健康機器メーカーであると同時に、レシピ本「体脂肪計タニタの社員食堂」で評判となり、東京・千代田区丸の内に「タニタ食堂」を開業している(株)タニタとのコラボレーションで、「タニタ食堂の金芽米」とパックご飯「タニタ食堂の金芽米ごはん」を発売されましたが、これはどちらから仕掛けたのでしょうか。
「タニタ食堂へ食事にいきましてね、そのときにご飯は金芽米の方が美味しいと思ったので、美味しくて、栄養価も高く健康効果がある金芽米を紹介しました」
「タニタ食堂のコンセプトも美味しく、ヘルシーにですから、両方の考え方が一致し、タニタ食堂のご飯に金芽米が採用されました。そして、タニタ食堂で食事をされた方から、ご飯が美味しかったのでこのお米が欲しいという声があり、タニタ食堂とコラボした商品を発売することにしました」
――発売以来大変に好評のようですね。
「いま全国の量販店や食品スーパーなど約3000店で販売されています。スーパーなど小売サイドからの要望が強いからでしょうが、米の販売ではライバル関係にあるともいえる大手の米穀卸が売りたいといってきますし、無菌包装米飯の『タニタ食堂の金芽米ごはん』では大手の食材卸も取り扱ってくれています」
「売上げは右肩上がりで推移していますし、米穀業界紙の調査で『売れ筋POSベスト50』にランクインし、4月の18位から6月には13位と順位をあげてきています」
「タニタ食堂とのコラボによって、金芽米商品が広く消費者に浸透し、金芽米の美味しさと健康効果が認知され、コラボ商品以外の金芽米商品の売上げも大きく伸びてきています」
◆口コミで広がる品質
――お米の価格は下がってきています。しかし、価格が下がったからといって必ずしも販売が伸びているわけではないようです。そうしたなかで金芽米は高価格を維持しながら販売を拡大しています。価格が高くても消費者から支持される理由はどこにあると思われますか。消費者の意識の変化があるのでしょうか。
「香川大学医学部の稲川裕之准教授は、金芽米の亜糊粉層には優れたLPS(糖脂質)が多く含まれている。そしてマクロファージ細胞は体内の死亡細胞や細菌、異物を貪食して排除する機能があり、免疫力や自然治癒力を向上させますが、このマクロファージ細胞を活性化させるのがLPSだとおしゃっています。また、亜糊粉層を露出含有している金芽米には通常の精白米の約5.9倍のLPSがあってマクロファージ細胞を活性化しているとも述べておられます」
「そして脳組織にあるマクロファージは、アルツハイマーの原因であるアミロイドβを除去することや、金芽米には生活習慣病、感染症、認知症、ガン、アレルギーなどの疾患を予防する効果が期待できるともおっしゃっています」
「金芽米は美味しいだけではなく、栄養機能に優れ、健康にもよいということがしだいに消費者のみなさんに認知され、それが口コミで広がっているからだと私はみています」
(写真=タニタ食堂の金芽米)
◆日本の水田存続のために
――消費者の求めるニーズに応えるだけの付加価値があれば多少高くても売れるということですか。
「ある程度余裕ができると人は、毎日の食事とか日常にはお金をかけず、旅行とか趣味など非日常にお金をかけますね。つまり価値があると思えればお金をかけます。もちろん低価格を志向する人はおおぜいいますが、金芽米は日常的なご飯とは違う別の価値があると一定の人たちに認められたから、価格を下げなくても販売量が拡大しているのだと思います」
「私は、金芽米を通じてお米の価値を高めることで、水稲農家に跡取りがいるようにしたい…そうして先祖が苦労して作り上げてきた日本の水田がこれからも存在するようにしたいと思っています」
――お米は日本農業の基幹作物であり、国民の大事な主食ですが、これからのJAあるいは生産者のコメ事業はどうあるべきだとお考えですか。
「いまTPPに対する論議が盛んに行われていますが、TPPに参加しなくても日本の水田農業は衰退します。水田農業を衰退させないためには、米農家が儲かるようにしないといけないし、そうでなくては後継者は育ちません」
「私は日本の水田は日本国民が食べる以上のお米を生産する力を持っているのだから、世界の米食する国の富裕層をターゲットにしたらいいと思います。彼らは健康のためなら、高くてもお金を出しますから、日本のお米の価値を認める人へ広げていくことだと思います。とくに金芽米にはマイナスの要素はありませんから、これからは世界をめざしたいですね」
◆世界初の米総合メーカー
――御社は、農研機構・東北農業研究センターと協同して水稲の品種改良に取り組み、耐病性、耐倒伏性、多収性に優れ、生育が容易で金芽米加工に適した「きんのめぐみ」を開発されました。精米機器メーカーから無洗米そして金芽米の開発・普及、さらに無菌包装米飯など食品加工へと事業をひろげてこられましたが、種籾の開発でさらに事業分野が広がりましたね。
「『きんのめぐみ』はきちんと種子登録されましたし、美味しい金芽米の原料となるお米です」
「ご指摘のように、事業分野が大きく広がってきていますが、種籾から消費者の食卓にのぼるご飯まで、お米に関するすべての事業を包括する『米関連総合メーカー』が東洋ライスという会社だと考えています。これからも日本の水田農業、日本のお米のために働いていきたいと思います」
【略歴】
さいか・けいじ
昭和9年和歌山県生まれ。昭和24年3月中学校を卒業し家業(食糧加工機販売業)に従事。36年3月東洋精米機製作所を設立、同年11月法人化に伴い同社に入社。38年4月財団法人雑賀技術研究所を設立し会長就任。59年11月(株)東洋精米機製作所取締役、60年2月同社代表取締役社長に。平成17年6月トーヨーライス(株)代表取締役社長に、25年3月上記2社を合併し東洋ライス株式会社を設立。同社代表取締役社長に。
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