流通:食は医力
【シリーズ・食は医力】第57回 世界に誇る食文化 和食2013年12月11日
・多様性あふれる食の世界
・食材の持ち味を引き出す
・狭い国土に多種多様な食が
・和食を守り育てる食育を
ユネスコの無形文化遺産に「和食 日本人の伝統的な食文化」の登録が決まりました。フランスの美食術、地中海料理、メキシコの伝統料理などすでに登録されている料理に比べて、和食は多くの点で圧倒的に優れていると信じていただけに喜ばしい限りです。
◆多様性あふれる食の世界
フランス、メキシコ、地中海の料理が絵の具を塗り重ねた絵だとすると、和食はパステルに水彩、水墨もという具合で多様性にあふれています。
こんな多彩な食文化は世界にほかに見当たりません。今日はその和食文化についていささか私見を述べてみます。
実は4年ほど前、連載第6回で和食を取り上げたことがありました。「日本食とアイデンティティ」というテーマで、和食のすばらしさを列挙しています。
具体的には[1]低脂肪である、[2]発酵食品が多い、[3]食物繊維が多い、[4]低カロリーである、[5]ビタミンやミネラルが多い、[6]コメの持つ力、[7]出しの力、[8]味や盛り付けの味わい深さ、などでした。
◆食材の持ち味を引き出す
これらに加えて和食を食文化として見てみると、何より感心するのは、権力者や上流階級の食と庶民の食の間に根本的な違いが見られないことです。
中華料理やフランス料理をみると、王侯貴族が食べる食事と庶民の食事とでは、素材も料理法も天と地ほどの違いがありました。
でも和食ではご飯でもお餅でも、サンマの塩焼きにせよ、あるいは味噌汁や漬物にしても、それほど貴賎の差が生じません。
これは和食の本質的なことではないかと思います。つまり素材そのものに大きな差はなく、あとは素材の良さをうまく引き出すことが大事なのが和食だということです。
フランス料理や中華料理というと、油やクリームでじっくり煮込んだり炒めたりして何重にも足し算をしているような印象があります。
その点、和食は素材の持ち味をどう引き出すか、そのためにはどのように調味料を使うか使わないかに知恵を絞ります。端的にはサシミのように何も加えない、わずかな醤油とワサビで魚介の持つ特質を味わおうとする。こんな繊細な食べ方は、健康という面からも非常に優れていると言えます。
◆狭い国土に多種多様な食が
煮物にしても、水煮を鰹節とポン酢によって食べるとか、出し汁で煮て素材の良さを引き出そうとする。こういう食べ方は世界でも珍しいと言ってよいでしょう。木の芽や柚子の皮を刻んで添えて微妙な味わいを楽しむというのもすごいことです。
これは大名料理であろうと、京都の料亭料理であろうと、庶民の家庭料理であろうと、本質的に違わないし、その気になれば国民的に手の届く範囲の食ということになります。言い換えれば和食とは押し付けがない、素材を相対化する食文化ではないかという気がしています。
もう一つ言えば、狭い国土でありながら各地の和食は多種多様です。今ふうに言えば地産地消によって風土に合った素材と調理法を通じて地域の農水産業と加工業の発展を守り続けた。それが和食の素晴らしさでもありました。
◆和食を守り育てる食育を
しかし現実はどんどん寂しくなっています。外食チェーンが全国津々浦々に店を出し輸入素材を多用して一律の味を提供する。若者はその味に慣れ切り、自宅の料理は味がないなどと文句を言う。
さらには学校給食も家庭料理も、レトルト食品や一律調味料で個性を失う一方です。子どもたちの味覚の将来、恐るべしでしょう。
無形文化遺産にふさわしくあり続けるには、料亭だけががんばってもだめなのです。外食、家庭、給食いずれにおいても和食の良さを守り育てる食育の重要性が問われています。
紙数が尽きてしまいました。この週末に「武士の献立」を見るつもりですが、和食の良さがどこまで感じられるか、楽しみにしています。
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