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流通:食は医力

【シリーズ・食は医力】第60回 味噌汁は朝の毒消し2014年3月13日

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【浅野純次 / 経済倶楽部前理事長】

・1000年の歴史ある名脇役
・使い勝手がよく調味料との相性も
・リジンなど豊富な必須アミノ酸
・納豆と並ぶ発酵食品の横綱

 味噌は中国で生まれたそうですが、日本では出藍の誉れというべきか、今や和食に欠かせぬ名脇役となりました。人びとも味噌を平安の世には食べ始めていて、すでに1000年の歴史があります。

◆1000年の歴史ある名脇役

 面白いことに醤油のほうが歴史的には新しくて、16世紀に「紀伊の赤桐某という男が径山寺味噌から醤油を醸造した」と文献に残っています。
 ついでにうんちくをもう一つ。日本にインスタント味噌汁が登場したのは1961(昭和36)年で、この年、長野のマルキチ味噌と山印信州みそから相次いで即席味噌汁が発売され、全国的にブームになったとか。
 味噌汁はそんなに難しいものではないけれど、独り身にとってお湯を注ぐだけでいいというのは確かに便利です。
 それにしても味噌ほど多様な食材はないでしょう。原料は大豆のほかコメや大麦もあり、素材、色、甘辛、見た目など地方の数だけ違いがあります。
 逆引き辞典で「味噌」を引いたら、出るわ、出るわ。赤味噌、甘味噌、合わせ味噌、田舎味噌、魚(うお)味噌、落とし味噌、鬼味噌、牡蠣味噌、鰹味噌、蟹味噌、カヤ味噌、芥子味噌、金山寺味噌、五斗味噌、胡麻味噌、米味噌…切りがないのでサ行以下は省略しますが、味噌がいかに生活に入り込んでいるか、よくわかります。

◆使い勝手がよく調味料との相性も

 味噌料理もいくらでもあります。桜沢里真『マクロビオティック料理』から最も簡単そうなのを二、三、引き写してみましょうか。
・ノビルの味噌煮:1センチ長さに切り油で炒め、味噌味にする。
・カブの味噌和え:小カブを小口切りにしてさっと茹で、味噌で和える。
・焼きナス:ナスを縦二つに切り、皮のほうに縦横に包丁目をつけ、油を引いたフライパンで両面を焼き、ゴマ味噌を添える。
 何かえらく簡単そうですが、味噌はとにかく使い勝手がいいようです。しかも好ましいところは、味噌だけで存在を主張したりせず、他の調味料との相性がよくて、風味が増しやすい点ではないかと思います。
 たとえば味噌汁にしても、味噌だけでもいいですが、昆布、煮干、干しシイタケでダシをとったところへ味噌を入れてつくれば一段とおいしくなることは大抵の主婦(主夫も)はご存じのはずです。

◆リジンなど豊富な必須アミノ酸

 さて味噌は健康の強い味方です。大豆、麦などのおかげで良質の蛋白質、特にリジンなどの必須アミノ酸が豊富で、昔からきこりや猟師が味噌玉を腰に下げて山に入ったとされるのは理にかなっていたわけです。
 さらに悪玉コレステロールを抑制するリノール酸、細胞や筋肉の老化を防ぐイソフラボンなども多い。ならば、何はなくとも味噌料理、と言っていいのではないかとさえ私は常々思っています。
 というわけで「二日酔いに味噌汁」だとか「味噌汁は朝の毒消し」などというのは筋が通った話なのです。あまりに直裁ですが「味噌汁は不老長寿の薬」ということわざもあるくらいです。

◆納豆と並ぶ発酵食品の横綱

 その秘密のカギは味噌が発酵食品である点にあります。味噌は微生物の宝庫であり、ヨーグルトに負けないほどの乳酸菌の働きによって腸を理想的な状態に置く効能があります。日本食の最大の特長の一つが発酵ですが、味噌は納豆と発酵横綱でしょう。
 その意味では味噌は長時間、炒めたりぐつぐつ煮込んだりせず、仕上げの段階で加えるのが理想的です。
 味噌について、塩分の取りすぎを心配する声もありますが、減塩味噌を上手に利用するとか、ほかの料理で減らし気味にするとかすればいいでしょう。
 というわけで私は、外食の際、お澄ましが出てくると、赤出しならよかったのにといつも残念に思うのです。あなた、お澄まし派ですか、赤出し派ですか。

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