流通:いま!食のマーケットは
【シリーズ・いま!食のマーケットは】第1回 強いコンビニ2014年4月15日
取材協力:大塚明・中央大学大学院戦略研究科客員教授(日本スーパーマーケット協会前専務理事)
・店舗5万店・10兆円に迫る規模に
・際立つセブンの強さ
・「いい気分」から「近くて便利に」
・高齢者の来店数が若者層に迫る
いま日本の小売業界は、これまでの既存業態の棲み分けが崩れつつあり、大きな曲がり角にある。その背景にあるのは、人口増の変化、高齢化や単身世帯の増加そして生活スタイルの変化だ。
人口減少が進んでいく中にあっても、店舗数は減らず、しかも一店舗の売り場面積が増えている現状の中で、商圏内の顧客の奪い合いは激しくなる一方である。それぞれの業態や店舗を使い分けられるほど豊かな人口を有する商圏は限定的になってきており、多くの地域ですべての客層を満足させることのできる店舗だけが最後に生き残ることになりそうな予感がする。
そのために小売業界のすべての業態で、いままで自店には来なかった客層の掘り起しによる「新たな客層を創造」することで「需要を創る」戦いを繰り広げている。
そこで、食品(素材も加工品も含めた)を中心とした小売業界で何が起きているのか、そしてどこを目指しているのかを、(株)ヤオコーの常務や日本スーパーマーケット協会の専務理事として、小売りの現場を長年にわたって経験してきた大塚明中央大学大学院客員教授を水先案内人に、探っていくことにした(大塚氏の問題提起と提供された資料をもとに編集部がまとめていく)。
第1回は、地域で最後に生き残る1店舗になるために、人口構造の変化と生活スタイルの変化に着々と対応しているようにみえるコンビニエンスストア(コンビニ)を取上げた。
高齢者や主婦も取込む
戦略へ舵を切る
◆店舗5万店・10兆円に迫る規模に
コンビニ業界のトップ企業であるセブン―イレブン・ジャパン(セブン)が昨年11月に創業40周年の節目を迎えた。セブンの40年は、日本のコンビニの歴史そのものだといえる。
コンビニの業界団体である日本フランチャイズチェーン協会(JFA)によれば、昨年1年のJFA正会員10社の売上高(全店)は、9兆3860億円と前年より4%増加。店舗数は4万9323店となっている。
今年に入っても、全店ベース売上げは、1月が前年比5.1%、2月が6%と伸びている。店舗数も2月末で4万9982店だ。おそらく3月のデータでは5万店を超えているだろう。
◆際立つセブンの強さ
2013年2月の決算をみると、セブンの売上高は3兆5084億円、店舗数1万5072店、平均1日売上高66.8万円、営業利益1867億円。ローソンは売上高1兆6934億円、店舗数1万1130店、平均1日売上高54.7万円、営業利益593億円。ファミリーマートは売上高1兆5845億円、店舗数9481店、平均1日売上高52.3万円、営業利益389億円となっている。
コンビニ3強といわれるが、セブンの強さが際立っていることがわかる。セブンはこの1年で1550店舗前後を開店し、2014年度も「1600店以上を出す。出店のアクセルを踏むのは時代の要請。飽和はありえない」「数年で2万店に届く」と井坂隆一セブン社長は語っている(2013年9月29日日本経済新聞)が、コンビニ市場のシェア50%獲得を目指している。
2位のローソンは、生鮮強化をはじめ、セブンにない良さをいかに出すかが課題だといえる。そしてファミリーマートは、国内事業での収益改善へ1500出店するなど規模拡大でNo.2をめざしていく。
◆「いい気分」から「近くて便利に」
順調に伸長してきたように見えるコンビニだが、2000年から8年間、セブンでも既存店売上高が前年割れが続いていた。08年は「タスポ」導入効果で売上げを回復するが、一巡すると前年割れのトレンドに戻ってしまった。
こうした状況を打破したのは、セブンの場合、これまでの「セブン―イレブン いい気分」(90年代にはこの後ろに「あいててよかった」と続いていた)というコーポレートスローガンを09年に「近くて便利」に変え、その戦略を明確にしてからだといえる。
どういうことか?
少子高齢化でコンビニの主力客の若い男性層が減少。一方で、高齢者や有職主婦など、遠くのスーパーに行くのは大変だと訴える層は増えている。この後者の需要を取り込むため、品揃えを抜本的に変えた。そのことで、セブンの特徴を長時間営業による利便性提供から、惣菜や冷凍食品、日配商品、調味料などスーパーで売られている商材で強化し、変えていく。
つまり、これからの時代に客数を伸ばすためには、主婦や高齢者の獲得が不可欠と考え、コンビニエンスがミニスーパーに舵を切ったのだ。そしてその価値が消費者から見直されるターニングポイントとなったのが11年3月11日に発生した東日本大震災だった。
もちろん、こうしたシフトは売上げが伸びず停滞していた期間にさまざまなノウハウを積み上げてきたことは間違いない。
セブンの品揃えをみてみると、コンビニを牽引してきたおにぎりや弁当などのディリー商品に加え、「PB商品のイメージを変えた」といわれる「セブンプレミアム」。さらに「上質なおいしさの追求で、食へのさらなるニーズに応えるブランド」としての「セブン―ゴールド」と、単に品揃えの幅を広げるだけではなく、質を高めた品揃えの充実をはかってきている。
◆高齢者の来店数が若者層に迫る
従来はなかったお客との対話販売を導入した「おでん」、セルフサービス方式によるレギュラーコーヒーの本格導入もその一環といえる。
セブンによれば、1994年の1日平均客数(1店舗)は936人で、年代別にみると29歳以下が59%、50歳以上が11%と圧倒的に若者の店だったが、2011年には客数が1059人になり29歳以下は33%、50歳以上が31%とほぼ同じ割合となり(『セブン・イレブンの横顔』より)、ミニスーパー化への舵取りが成功しているといえる。
店舗での食品の販売だけではなく、弁当などの宅配やネットの利用、マルチコピー機を活用した多様なサービス提供、行政サービスの一部代行、銀行ATMなど、文字通り「近くて便利な生活の拠点」になることがいまのコンビニの方向だといえる。
そしてそれは、いまはまださまざまな業態の店舗があって、消費者に使い分けされているが、「時間価値の増大」や「人口減少」が進み、その商圏で最終的に1店舗しか生き残れないとなった時に、地域ニーズのすべてを満たし生き残れる店舗であろうということでもある。
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