流通:いま!食のマーケットは
【シリーズ・いま!食のマーケットは】第2回 強いコンビニ(2)2014年5月21日
取材協力:大塚明・中央大学大学院戦略研究科客員教授(日本スーパーマーケット協会前専務理事)
・停滞期にノウハウを蓄積
・シビアな品揃え・商品政策
・家庭ではできないおいしさ・品質を
・女性はもちろん男性にも好評なスイーツ
・「チームMD」でPB商品を開発
コンビニの強さの秘密はどこにあるのだろうか。その一つが、生活ニーズに的確に応えた商品開発力だといえる。今回は、どのように商品開発がされてきているのかをみてみる。
開発商品で顧客を創造
◆停滞期にノウハウを蓄積
サークルK・サンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングス(株)によれば、「こだわりの贅沢食パン」の販売数量が発売から3週間で100万食を突破。人気NB商品より6割ほど高いのに、予定の2倍の早さで売れたという。
高級食パンは、昨年の春にセブン&アイ・ホールディングスの「セブンゴールド 金の食パン」が火付け役となって市場が活性化している。
だがこれは、突然に生じた現象ではない。
コンビニ各社は、既存店売上高の前年割れが続き停滞していた1999年ころに、「脱同質飽和化」を目指しマーケティングとイノベーションに取組み、人口減少社会や少子高齢化への対応、ネット社会対応やコミュニテイづくりなど、さまざまなノウハウを積み上げてきた。特に力を入れてきたのがこれらを前提とした「商品開発」だ。
◆シビアな品揃え・商品政策
小売業の競争では、大手メーカーの名前の通ったNB商品を品揃えすることは集客効果という面でメリットがあるが、反面、どこででも手に入るために差別化、独自化の武器とはならなくなり、結局、安売り競争に陥り、それも激化していく。
そこで、他の企業では売っていないオリジナル(PB)商品を開発し、競争上の差別化策を追及することが重要になってきた。つまり他にはない「存在理由」をつくることだ。
しかも、PB商品は、お客の生活ニーズを満たすために、自主的・主体的に開発し、自らがリスクを背負うことになるので問屋やメーカーの利益の一部を享受できる。
欧米でも流通チェーンは、生活のニーズから自分たちの品揃えを考え、そのための商品を自分で調達、開発してきた歴史をもつ。
また、コンビニのフランチャイズシステムは、利益重視の考えを根底におく会計システムを持っている。それは、加盟店の売上総利益を本部と加盟店が分け合う、粗利益分配方式になっている。本部推奨の商品が店舗で売れず利益が出なかった場合は、本部に責任があるだけでなく、チャージも少なくなるということだ。
多くのスーパーマーケット企業では、本部と店舗の関係が、同じ会社の社員同士ということで、どうしても甘くなりがちだが、コンビニのように加盟店主が店舗や人材を準備して加入するフランチャイズ方式では、本部と加盟店が対等な立場で同じ目標に向かって努力することのできるシステム構築が重要だ。当然、商品や品揃え政策も、よりシビアなものが要求される。
(写真)
日々進化する「おにぎり」は超ヒット商品(セブン-イレブンの店頭で)
◆家庭ではできない「おいしさ・品質」を
そこで粗利益の高い商品を積極的に開発し、投入しなければならない。その最たるものがファストフードであり、その超ヒット商品が「おにぎり」や「おでん」ということになる。
常に“味”を追求して革新を継続し、美味しさの実現のためなら調理器具まで開発したりしてきた。
1976年、セブン―イレブンでは、おにぎりや弁当は家でつくるもので、わざわざ店で買うものではないという時代に、セブン-イレブンは、「家庭ではできないようなおいしさ、品質を実現すれば、必ず買ってもらえるようになる」と考え開発をスタート。
差別化のポイントを「冷めてもおいしい」ことにおき、原材料の吟味、ごはんの炊き方の研究をすすめ、炊飯器も独自のものを開発した。
そして1978年、「パリッコフィルム」を考案し、業界で初めてパリッとした海苔の食感が楽しめる手巻きタイプのおにぎりを発売。おにぎりは一気にヒット商品となった。現在も、おにぎりは年間17億個も売れるヒット商品としてコンビを支えている。
また、品質管理における工場間の格差を解消し、商品の安全性を高めるために専用工場で製造を行い、原材料の生産地や工場の内部、商品そのものに対し、さまざまな段階でチェックを行い、流通経路を一元管理するトレーサビリティが構築されている。
さらに2002年に導入した「レシピマスターシステム」では、一つひとつの商品について、どの工場で、どういった原材料がどれくらい使用されているのかを明確にすることができる。自主的にお米のDNA検査を行い、品種の混同をまで防いでいる(「セブン&アイ 四季報」による)
また、年に数回、おにぎりを均一価格で販売するキャンペーンを展開しているが、これは、価格などの販売条件を同一にすることで、お客の本当のニーズを把握し、その結果を次の商品開発につなげているといえる。おにぎり一つとっても、今でも進化させているのだ。
◆女性はもちろん、男性にも好評なスイーツ
女性客を取り込む重要なアイテムであるスイーツでも、従来は、配送での型くずれを防ぐため商品の形状や素材、特にクリームなどは植物性を中心にしなければならず、多少、味を犠牲にしてきたため、クリームがあまり美味しくなかった。
これを、大転換させたのが、ローソンの「プレミアムロールケーキ」だ。1人用にカットしたスポンジ生地でリングを作り、その真ん中に生クリームを入れた「巻かないロールケーキ」を開発。円形の容器に入れたので、配送途中でクリームが崩れることもなくなり、洋菓子店と同様に生クリーム感のある素材に変えることができた。生地も洋菓子専門店が使う神戸の製粉メーカーのものに変えた。
従来のロールケーキは、1人用に切りわけ立てて皿にとりフォークで食べていたが、それを寝かせて、スプーンで食べる新しいカテゴリーのものにしたのだ。
スイーツは女性だけではなく、「食べたいがケーキ店に行くのは…」という若い男性にも好評を得て、コンビニの重要な商品となっている。
(写真)
スイーツの新しい形を提案したローソンの「プレミアムロールケーキ」
◆「チームMD」でPB商品を開発
こうした開発商品は、さまざまな分野のメーカーや物流企業と組み、コンセプトづくりから原材料の選定などを「チームMD(マーチャンダイジング)」と呼ばれる方法で行われてきた。今では「チームMD」は小売業に広く定着しているが、セブン-イレブンが最初に構築したものである。
セブン-イレブンでは、79年に大手米飯メーカーを中心に日本デリカフーズ協同組合(NDF)を結成させて、開発商品のコンセプト策定や原材料の共同購入などを一緒に行っている。米飯、調理パン、調理麺、漬物メーカーなど70社を超える企業が参加しており、全国に171あるデイリー商品の製造工場のうち157が専用工場になっている(『セブン-イレブンの横顔 2013-2014』より)。
かねてより、コンビニ業界には、5万店舗限界説があった。人口2500人に1店舗で飽和状態に陥るという予測だ。だが、既に3月末で10社合計4万9930店舗。大手3社は引き続き大量出店の意向を示している。各社のマーケティングとイノベーションで新しい顧客創造ができ、結果として食品スーパーマーケットや総合スーパーから顧客を奪い続けることを想像すると、限界説は意味がないように思える。
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