流通:食は医力
【シリーズ・食は医力】第64回 夏こそ酢の出番2014年7月15日
・塩と並び、奈良以前からの二大調味料
・安物は健康守る効能も期待薄
・体内の疲労物質分解排除するクエン酸が
夏の調味料といえば一押しはお酢でしょうか。暑い日差しを避けながら食べる冷たいトコロテンも酢醤油なしではさまになりません。酢はやや陰性なので体を冷やしてくれることでも夏向きです。
◆塩と並び、奈良以前からの二大調味料
食欲の落ちる夏に、食欲をそそってくれる酢を利用しない手はありません。肉料理には野菜や海藻たっぷりのサラダを添えて酢醤油かポン酢でシンプルにいきましょう。
ご飯にしても暑くて食欲がわかないなどと言わず、合わせ酢調味料(酢、砂糖に塩少々)を振り込んで寿司めし風にすれば食は進みます。混ぜご飯にでもなれば完璧です。
酢は古今東西、さまざまに登場します。日本では奈良時代以前から酢と塩は二大調味料だったようです。「いい塩梅(あんばい)で」などという言葉が料理に限らず日常的に多用されたのは、古くから塩と酢が生活に入り込んでいたことを物語っています。
当初、梅は酸っぱい調味料として使われていたのですが、しだいに酢が主役になってきます。「いい塩酢(あんさく?)で」とでも言うところでしょうか。
◆安物は健康守る効能も期待薄
酢には酢酸がたくさん含まれていて、酸っぱいのはこの酢酸のためです。酢酸は化学的に合成できますが、食品酢は普通、穀物や果物を発酵させて作ります。米酢、酒粕酢(粕酢)は日本固有で、欧米ではワイン酢(ブドウ酢)やリンゴ酢が主流です。
本格的な酢は本醸造酢、純粋米酢などと呼ばれ、数カ月以上、寝かせて発酵が進みます。安い酢には寝かせる期間が極めて短いもの、原料に合成物質が混ざっているものなどがあり、味が劣るばかりか健康を守る効能も期待薄です。
酢の栄養について見てみましょう。食品成分表を調べてみて意外だったのは、ビタミン、ミネラルの量がごくわずかなことでした。これは穀物酢だろうと果物酢だろうとほとんど同じでした。また脂質、蛋白質の量もたいしたことはないのです。
◆体内の疲労物質分解排除するクエン酸が
でも酢には多くの利点があります。第一に量は少ないけれど良質のアミノ酸を含んでいること。
クレオパトラは酢に真珠を入れて溶け出たのを飲んで美を保とうとしたと伝えられています。かつてはやった「酢卵健康法」もこれにヒントを得たのかもしれません(最近あまり聞きませんが…)。
第二に食べ物の味を柔らかくすること。で、苦味やアクを抜く力があります。中華料理は油をたくさん使いますが、酢を加えることで脂っこさが減殺され、食後にもたれることも少なくてすみます。
第三に防腐や殺菌の働きがあること。梅干より殺菌力は強いそうで、夏の料理に酢が重用されてきた一因でもあります(しめサバや酢ダコは典型です)。さらにビタミンCが破壊されるのを防ぎます。レモンと酢は一緒がいいとされるのもそのためでしょう。
第四に、酢を使うことで塩を減らすことができるので、減塩を心掛けなければいけない場合に酢は何よりです。
そしてそれ以上に昔から言われているのは、酢には体をアルカリ性に保つ働きがあること。クエン酸が体内の老廃物つまり疲労物質を分解排除する効果です。だから夏のだるさには酢がいいとされてきたのです。
酢は弱酸性ですが、体内に入るとアルカリ性になるのだとか。食べるとき酸っぱくて、アルカリ性として働くというまことに都合の良い食品なのですね。
なお尿酸の排出にも効果があり、尿酸が関節などに沈着するのを防ぐので、痛風にもいいと言われています。
というわけで良いことずくめの酢ですが、効能のあるのはまろやかな味わいの本物の醸造酢です。安いものはあまり効き目がないと思ってください。本物には本物だけの力がある。これは食物すべてに通じる真理です。
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