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流通:食は医力

【シリーズ・食は医力】第72回 ゴマだって「畑の肉」2015年4月15日

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【浅野純次 / 石橋湛山記念財団理事】

 昔から日本では精進料理が法事のときなどに重用されてきましたが、その際、肉や魚の代わりをしたのが大豆(豆腐、納豆など)とゴマ。いずれもカロリー、蛋白質、脂質が極めて豊富です。
 まして精進料理ばかりだったお坊さんがた(今の方々ではありません)にとっては、大豆製品とゴマは欠くべからざる食品でした。
 ゴマを炒ってすり潰し、ゴマ味噌やゴマ豆腐、ゴマ汁粉などさまざまな形で食しました。昔のお坊さんが粗食と言われながら意外に長生きしたのは、ゴマのおかげが大いにあったと考えられます。
 現代は寿命がどんどん延びる時代ですが、いつまで健康でいるかの「健康寿命」を延ばすためにも、今日はゴマ健康法について考えてみたいと思います。

◆粗食でも長生きの秘訣

 まずゴマの種類ですが、金ゴマ、白ゴマ、黒ゴマがあり、金と白は脂肪分が多いのでゴマ油の原料に使われます。黒は香りがいいので調味料的な使われ方が多いです。もちろん金も白も、色の取り合わせもあって調理で使われることもしばしばあります。
 ライバルの大豆たとえば黄粉(きなこ)と比べると、蛋白質は黄粉が豊富ですが、脂質、脂肪酸、ミネラルではゴマに軍配が上がります。
 中国の孫文は大豆のことを「畑の肉」と呼んで絶賛しましたが、ついでにゴマも誉めてもらいたかった。大豆もすごいけれど、総合力ではゴマのほうがほんの少し上かと個人的には思っています。
 もちろん大豆ほどたくさん食べられるわけでもなし、さらに晩酌の友として枝豆にはとうていかないませんけれども。

◆総合力で大豆より上

 さて、ゴマに多いレシチンは体に非常に良い働きをします。特に成人病や脳の障害を防ぐにレシチンは効果的なので、中高年ほどゴマ料理やゴマドレッシングをたくさん取るといいでしょう。
 ミネラルも、ゴマの皮に多く含まれています。いちばんはカルシウムで、骨粗しょう症が心配な年配女性、最近イライラすることの多い年配男性、どちらにもゴマのカルシウムは大いに手助けとなるはずです。
 ついでにいうと、ゴマがほうれん草との相性がいいのはカルシウムが多いから。ほうれん草のおひたしにすりゴマ(または鰹節)をたっぷりかけて食べると、ほうれん草のシュウ酸が結石を作るのをカルシウムが防いでくれるのだとか。ほうれん草をおいしく食べるのと一石二鳥なので覚えておくと便利です。
 ところで「ゴマは血行を良くする」と昔から言われてきました。血行は免疫力アップや細胞の若返りをもたらすので、未病の解決、頭脳の明晰化(程度問題ですが)、毛髪の問題の改善、つややかな肌などに効果があります(同前)。

◆栄養たっぷりゴマ豆腐

 ゴマで気をつけるべき点は皮が固いので、調理時点ですり潰すか、噛み砕いて食べるかしないと、体内で消化吸収されないで終わってしまうということです。
 ですから昔からゴマといえば炒ってすり鉢ですり潰したのです。今はすり鉢のない家も多いようなので、せめて卓上ゴマすり器(手動)か小鉢かを購入して直前にすり潰しましょう。時間とともに酸化していくので用心したいものです。
 酸化のこともあってすりゴマやゴマ製品はあまり商品化されていないようです。であれば自分で直前にすり潰すしかないでしょう。
 そうした中で数少ないゴマの惣菜がゴマ豆腐で、これはすり潰した白ゴマとくず粉を混ぜて火にかけたもの。大豆はゼロで豆腐とは別物ですが、ゴマの栄養がたっぷりなので、わが家ではよく登場します。
 「ゴマの蝿(はえ)」「ごまかし」「ゴマすり」など悪いイメージの多いゴマですが、みなどれも濡れ衣です。ゴマすりはゴマをするとすり鉢のあちこちにゴマがくっつくのを誰にでも媚びへつらう姿になぞらえたもの。こんなゴマすりなら毎日だって結構、と思いますが、いかがですか。

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