流通:激変する食品スーパー
【第2回】大きく変わる商品価値の認識 産地としてどう対応するのか2015年4月24日
差別化の要素インストア加工とアウトパック加工
食品スーパーに限らず、小売業は他店と差別化するため「自店にしかない」商品を求める傾向がある。独自の魅力的な商品があれば、その購入を目的としたお客様を自店にひきつけられるからだ。食品スーパーではインストア加工が差別化の代表例と言え、実際、新店で発表される報道資料にそれを特徴とする店舗が増えている。
◆「できたて」が売りだがコスト増に
インストア加工とは、店内で加工、パッケージ(包装)して販売する形態で、それ自体は旧来から既に多くの店舗で行われており、新しい取り組みではない。お客様の購入動機につながる「鮮度」のなかでも「できたて」、「つくりたて」の訴求がしやすい点や、店頭の売れ行きに応じて柔軟に生産(陳列)量を調整でき、自店のお客様のニーズに応じた商品開発ができる点が大きなメリットだ。
それでは、積極的にインストア加工を進めていけば、競争力が高まるのだろうか。しかし、現実には思い通りにならないようだ。
というのも、経営全体として捉えると、「収益性」が大きな課題となって立ちはだかるからだ。インストア加工を実現するには、店舗ごとに加工に従事するスタッフ数が必要となり、どうしてもコスト増を招いてしまう。その人件費に見合う価格設定をすると、競争力がなくなり、商品の訴求力が低下する。反対に、価格を抑えるとなると、販売量を増やさなければならず、値下げや廃棄などの「ロス」のリスクが高まる。インストア加工の商品は、鮮度を特徴として打ち出しているため、販売期限が短いものが多いからだ。また、人手不足の問題も店舗にとっては大きな負担となっている。そのため、インストア加工一辺倒ではなく、アウトパック加工をバランスよく取り入れ、差別化と収益性を両立しようとする動きが加速している。
◆プロセスセンターでアウトパック
アウトパック加工とは、既にパッケージされた商品を店舗で陳列し、販売する形態であり、外部の業者だけでなく自社のセンター内でも行われる。特に近年は自社のセンター加工の進化が目覚ましい。食品スーパーでは、このような生鮮の加工から配送までを一括して行う拠点を「プロセスセンター」と呼んでいる。
大手各社がこぞってプロセスセンターの機能強化、新設に取り組んでいる。プロセスセンターでは、集中した加工が可能であり、店舗では少ない人員で効率的な体制が作りやすい。また、商品の品質や見た目などの標準化が図りやすく、イメージの向上にも寄与できる。さらに、コンプライアンス面でも効果がある。衛生管理や不正表示の問題などを店舗別に任せるのではなく、プロセスセンターで一元管理することでリスクを最小限に留められるからだ。
◆外部業者との連携で効率化はかる店も
一方、外部業者も対応力を強化している。加工数や歩留まり改善といった生産性の向上に加え、食品スーパーだけでは対応しにくい専門的な商品開発力の強化や品質面における魅力の向上、販売期限の延長化といった付加価値を加えることで連携の度合いをより高めている業者も少なくない。業界は異なるが、セブン‐イレブンのチルド・弁当類を見ていても外部業者の協力が競争力の源泉につながっているのは明らかだ。最近は、流通業全体で温度帯別管理と衛生管理が向上しており、アウトパック加工であってもインストア加工とそん色ない「鮮度」で商品を提供できつつある。そのため。一部では、アウトパック加工に重点を置き、効率のよい店舗運営体制を構築している食品スーパーがある。
◆従来とは異なる規格基準や商品仕様
このような変化によって、農産物の流通にはどのような影響があるだろうか。まず、商品の仕様や規格基準の変更である。かつてのように食事の材料として、「素材」を商品に販売するのであれば、外見や大きさなどがお客様の目に直接触れるため、傷みのあるものや規格外商品はほとんど売場に陳列されなかった。しかし、食事の簡便化・即食化が進み、商品の「加工度」が高まってくると、外見や大きさはあまり意味をなさなくなる。多少の傷みがあっても、取り除いて品質に問題がなければ、材料としては十分であり、規格外商品であっても扱われるケースが増えるだろう。商品価値の認識が大きく変わり、生産者、販売者共に選択の余地が拡がってくる。この点を頭に入れながら、今後の生産計画を検討してほしい。
次に、販売する加工者や食品スーパーからの要望への対応である。今後はある程度アウトパック加工を進めつつも、最終加工だけをインストアで行う商品が増える。また、差別化を図りやすい商品は積極的にインストア加工を進め、その他の商品はアウトパック加工で対応する店舗もできてくる。そのため、温度帯や加工の度合い、物量の安定供給など条件が多岐にわたり小回りを重視した要望が増えてくるだろう。組合として、既存の生産・加工体制で対応が可能なのか、新たな投資が必要なのか、それぞれの強みを念頭に置きながら、体力を高めていく必要がある。
(図)差別化商品加工方法比較 (例:生フルーツジュレ)
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