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流通:食は医力

【シリーズ・食は医力】第74回 酸性食品は体に悪いか2015年6月26日

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【浅野純次 / 石橋湛山記念財団理事】

 健康に関心のある人がよく持ち出す話に、酸性食品は体に良くない、体をアルカリ性に保つべきだ、というのがあります。本当でしょうか。

◆人体は常に弱アルカリ性

 まず食品の酸性とアルカリ性とは何なのかを見ておきましょう。『広辞苑』によるとこうです。
「食品に含まれる無機質のうち体内で酸性に作用する硫黄・リン・塩素などが、アルカリ性に作用するナトリウム・カリウム・カルシウムなどより多い食品。穀類・肉・魚・卵など」
 『新明解国語辞典』はどうか。「〔アルカリ性食品に対して〕魚類・肉類などのように蛋白質・脂肪を含む食品。〔焼いたあとの灰を溶かした液体は酸性を示す〕」とカッコ内の説明が少し科学的です。
 要するに、食品に含まれる無機質(ミネラル)のうち、硫黄・リンなどの元素量(A)と、カルシウム・カリウム・ナトリウムなどの元素量(B)と比べてみて、Aが多いと酸性食品、Bが多いとアルカリ性食品と呼ぶのですね。
 酸性度とアルカリ度は、その食品を焼いたものを中和するために必要なアルカリと酸の量を測ります。中和というのは、酸でもアルカリでもない真ん中の状態でpH(ペーハー)は7です。リトマス試験紙の実験、やりましたよね。
 実は、私たちの体(血液やリンパ液)は常にpH7.4に保たれています。つまり弱アルカリ性なのです。

◆pH8では生きられない

 辞典の説明どおり酸性食品は肉、魚、卵、穀類など、アルカリ性食品は野菜、キノコ、果物、海藻などです(ついでながら、お酢は酸っぱいから酸性というわけではなく、むしろアルカリ性です)。
 では「アルカリ性食品を多く取って体をアルカリ性に保つのが好ましい。酸性食品ばかり食べると体が酸性に傾いて健康をそこなう」という説は正しいのか。
 結論から言うとこれは間違いです。酸性食品を食べ過ぎても体は酸性にはなりません。体内に酸性の物質が多くなれば体はどんどん酸を排出して、ちゃんとpH7.4にする仕組みに体はなっているからです。
 同様にアルカリ性食品をたくさん食べて体をアルカリ性にしようとしてもそうはいきません。これもどんどん排出されてしまいます。万一、6(酸性)だとか8(アルカリ性)だとかに行ってしまうと生命は維持できません。
 そもそも体をアルカリ性に保とうというのは非現実的な思い込みです。野菜や果物や海藻が体に良いという考えからアルカリ性食品は体に良い、アルカリ体質は良いという連想となったのかもしれません。
 というわけで酸性食品とアルカリ性食品のバランスをとるということ自体にはなんの意味もありませんが、動物性蛋白と野菜、海藻、果物のバランスを保つことは大切です。

◆体内ではなく実験室の話

 現代人の食は得てして肉や卵が多すぎて野菜、キノコ、海藻、果物が少ない傾向がありますから、その意味ではアルカリ性食品の重要さを忘れないようにすることはおおいに意味があると言えるでしょう。
 詳しく言うと、酸性食品、アルカリ性食品というのは、体の中での働きを言うのではなくて、焼いて酸とアルカリの度合いを測るという実験室の中の話でしかないのです。
 だから『広辞苑』の「体内で酸性、アルカリ性に作用する」というのは誤解を招く文言だという気がします。新村出先生と岩波書店には恐れ多いことですが。
 ということなのですが、試験管の中で、どんな食品のアルカリ度が高いか、ちょっとこだわってみました。高いのは(高ければ健康に良いわけではないです、念のため)、ほうれん草15.6、ワカメ15.0、大豆10.2、ニンジン6.5、大根6.4など。
 どれもわが家の常連ですが、わが家の健康が持続できればやはりアルカリ食品はすごい、ということに将来、なるかもしれない。と半分冗談、半分まんざらでなく思いました。

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