世界初、干ばつに強いイネ遺伝子発見 生物研2013年8月8日
農業生物資源研究所(生物研)などの研究グループは世界で初めて、イネの干ばつ耐性を高める深根性遺伝子を発見した。8月4日付の英国科学雑誌『Nature Genetics』に掲載された。
乾燥地域では、植物は土壌のより深いところから水を吸い上げる必要がある。そのため、根が地中深くにのびていく。しかし、そうした根を深くする形質(深根性)を現す遺伝子は明らかになっていなかった。
今回、生物研、国際熱帯農業研究センター(コロンビア)、名古屋大学、農業・食品産業技術総合研究機構作物研究所の4者は、水稲に比べて根が深くのびやすい陸稲から、イネの深根性遺伝子「DRO1遺伝子」を発見。これを熱帯アジアで広く栽培されている水稲多収品種「IR64」に導入したところ、従来に比べて2倍も根が深くのびた。
通常の栽培環境では両品種とも収量に差は出ないが、厳しい干ばつ条件を再現した試験栽培では、従来品種は収量がほぼゼロだったのに対し、DRO1遺伝子を組み込んだIR64は普通栽培の3割ほどの収量を得られたという。
また、トウモロコシ、ソルガム、大麦など他の作物でもDRO1遺伝子と似た性質を持つ遺伝子があることが明らかになっており、今回の研究を応用すれば、さまざまな耐干ばつ性作物品種の開発が可能になると期待される。
日本国内でみれば、深根性遺伝子を導入することで、倒伏に強い品種や登熟性を改善した品種の開発につながることが期待される。
今後は、フィリピンの国際イネ研究所と共同でDRO1遺伝子を導入したIR64のアジアへの普及を、さらに国際熱帯農業研究センターと共同でラテンアメリカ稲への導入が計画されている。
(イラスト)
一般的な水稲(左)と陸稲の根張りのイメージ。
(写真)
DRO1遺伝子を導入したIR64(右)と従来品種。右は根ののびる方向が下向きになっている。
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