赤い果肉のリンゴなど 農研機構が新3品種2013年12月11日
農研機構果樹研究所はリンゴ、ナシで新たに3品種を育成したと発表した。
【リンゴ「ルビースイート」】
1個450gほどで果実が大きく、甘くて食味が良い生食・加工兼用の中生品種だ。果肉が赤いのが特徴。
日本で流通しているリンゴの多くは、アントシアニンを含んでいないため果肉は黄白色だ。しかし、近年、ジュースやジャムなどの加工品を開発する際にリンゴの赤色を活かしたいと、果肉の赤いリンゴのニーズが出てきた。
「ルビースイート」はそうした声に応える新品種で、果肉・果汁とも鮮やかな赤色から淡赤色だ。従来の赤肉品種と異なり、糖度が高く、酸度が低いため、生食でも食べられる。
開花盛期は5月下旬、収穫盛期は10月下旬で、「紅玉」とほぼ同じ。従来の品種と同じ防除で、斑点落葉病を防ぐことができ、さびもほとんど出ない。
農研機構では、「果肉や果汁の色調を活かして特徴ある加工品製造に利用できる」として、需要拡大を期待している。
【ナシ「甘太(かんた)」】
高糖度で良食味の晩生品種。試験栽培では一樹あたり収量が36.2kgにも達し、早生「幸水」の2倍以上、中生「豊水」の1.5倍という収量の多さが特徴だ。また、晩生としては珍しく硬度が低く軟らかい。
国内で栽培されているナシ品種の4割は幸水、3割は豊水と、硬度が低く軟らかい品種が占めている。一方、晩生品種の多くは硬度が高く、軟らかい品種に人気が集まる現在のニーズに適さず、栽培が拡大しにくかった。
甘太は晩生ナシの需要拡大をめざして育成された品種で、硬度は幸水、豊水と同程度で、糖度はこれらよりも高い。収穫盛期は10月初旬で、日持ち性は豊水と同程度。心腐れ、みつ症、裂果の発生はなく、黒斑病には抵抗性がある。黒星病には罹病性があるが、慣行防除で対策できる。
全国33県で試作したところ、南東北以南の大部分で有望と評価された。全国的な普及と晩生ナシ需要の拡大に貢献する品種として期待される。
【ナシ「凛夏(りんか)」】
果実が大きく、果肉が柔らかい早生品種。暖地でも安定した生産ができるのが特徴だ。
近年、平均気温の上昇に伴い、九州など西南地域では主要ナシ品種の「幸水」の花芽が枯死するなどの被害が増えてきた。「凛夏」はこうした暖地でも、花芽が安定的に着生し、結実する。
平成23?24年に鹿児島県薩摩川内市で行った試験栽培では、幸水が短い枝では47%、長い枝でも37%の花芽が枯死したのに対し、凛夏はそれぞれ8%、3%と被害が少なかった。
収穫期は幸水とほぼ同じで8月下旬。若木(6?7年生時)の収量は幸水とほぼ同じく一樹あたり16.2kgほどだ。果肉の硬度は幸水より軟らかく肉質は良好。糖度は幸水と同じ程度で、pHがやや低いため多少の酸味がある。
全国のナシ産地で栽培が可能だが、とくに鹿児島県などの暖地での普及を期待している。
◇
これら3品種はいずれも11月22日に品種登録の出願が公表され、平成26年秋季から苗木が販売される予定。
品種についての問い合わせは、農研機構果樹研究所企画管理部運営チーム(TEL:029-838-6443)まで。
(関連記事)
・凍霜被害リンゴの支援事業を実施 農水省(2013.10.23)
・温暖化でリンゴが甘くなる 農研機構などが立証(2013.08.21)
・凍霜被害受けたナシの対策事業実施 農水省(2013.07.09)
・果樹園などの「棚下作業用アシストスーツ」を開発(2013.02.01)
重要な記事
最新の記事
-
日本人と餅【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第331回2025年3月7日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「コメ騒動」の原因と展望~再整理2025年3月7日
-
(425)世界の農業をめぐる大変化(過去60年)【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年3月7日
-
「とやまGAP推進大会」に関係者約70人が参加 JA全農とやま2025年3月7日
-
新潟県産チューリップ出荷最盛期を前に「目合わせ会」 JA全農にいがた2025年3月7日
-
新潟空港で春の花と「越後姫」の紹介展示 JA全農にいがた、新潟市2025年3月7日
-
第1回ひるがの高原だいこん杯 だいこんを使った簡単レシピコンテスト JA全農岐阜2025年3月7日
-
【スマート農業の風】(12)ドローン散布とデータ農業2025年3月7日
-
小麦ブランの成分 免疫に働きかける新機能を発見 農研機構×日清製粉2025年3月7日
-
フードロス削減へ 乾燥野菜「野菜を食べる」シリーズ発売 農業総研×NTTアグリ2025年3月7日
-
外食市場調査1月度市場規模は3066億円2019年比94.6% コロナ禍以降で最も回復2025年3月7日
-
45年超の長期連用試験から畑地土壌炭素貯留効果を解明 国際農研2025年3月7日
-
日本赤十字社のプロジェクト「ACTION!防災・減災」に参加 コープみらい2025年3月7日
-
健康増進へ野菜摂取レベルなど競う企業対抗企画 タキイ種苗が優勝2025年3月7日
-
フルーツピークス横浜ポルタ店2周年記念 いちごの超豪華パフェや感謝価格のタルト登場2025年3月7日
-
EVトラックの最適充電マネジメントシステムサービスを提供開始 グリーンコープ生協くまもと2025年3月7日
-
「金芽米」活用で市職員の花粉症予防・改善にチャレンジ 大阪・泉大津市2025年3月7日
-
台湾へのイチゴ輸出を本格化 JAかみましき2025年3月7日
-
道の駅「明治の森・黒磯」で「手塚さんちの長ねぎドレッシング」新発売2025年3月7日
-
鳥インフル 米デラウェア州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年3月7日