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集落営農から導入を 広島で鉄コ研修会2014年2月24日

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鉄コーティング水稲直播、普及推進めざす

 JA全農ひろしまは2月18日、JA西日本営農技術センター(広島県東広島市)で鉄コーティング(鉄コ)水稲直播技術研修会を開いた。県内13JAのうち米産地をもつ10JAの営農指導員を中心に40人ほどが参加。新たな栽培技術とその意義を学んだ。全国平均と比べても特別に直播栽培の普及が進んでいるわけではない広島で、全国に先駆けた研修会が開催されたとあり注目された。

◆4割削減、移植は困難

研修会には40人ほどが参加した。 政府は農業改革の1つで米の生産コスト4割削減という目標を掲げ、また、流通の現場でも現行の平均卸売価格より2割ほども低価格な国産米へのニーズがあるなど、生産現場にはさらなる生産コストの削減が求められている。
 しかし、従来の移植栽培は「生産技術や防除資材、農機が開発され非常に高いレベルにあるが、人員や防除体系など含めても、これ以上の大幅なコスト削減は難しい」(山内稔・JA全農中四国肥料農薬事業所技術主幹)のが現実だ。
 JA全農では、こうした課題を解決するための方策として、平成19年より鉄コ直播に注目し、独自に研究をすすめてきた。そうしたなか、鉄粉と焼石膏を混ぜた「プレミックス」や種子の固着を防ぐためのシリカゲルなどを開発。また、鉄コ種子専用の防除剤も数年のうちに開発する予定となっていることから、26年産米からの本格的な普及拡大に乗り出した。
 1月末には鉄コ直播の全国推進大会を初開催し、向こう3カ年の段階別普及推進ステップと目標面積などを発表した。

(写真)
研修会には40人ほどが参加した。

 

◆激しさ増す産地間競争

鉄コ種子(上)と無処理種子。鉄コ種子の方が生育がいい。 広島県の水稲直播栽培面積はおよそ90ha(25年産、全農調べ)。県内水田面積2万6000haのうちの0.3%ほどに過ぎない。
 なぜ、こうした地域がいち早く鉄コの研修会を開いたのか。
 1つは、「生き残りをかけた産地間競争は一層激しさを増す。そのためには他県に先んじて取り組む必要がある」(JA全農ひろしま米穀・直販部)と考えたからだ。JA全農ひろしまでは買取集荷の導入やパールライス部門担当者による集落営農訪問活動など、販売力強化の取り組みをすすめているが、そうした流通面だけでなく生産面での改革として鉄コに注目した。
 また、競争相手は国内だけではない。以前、JAグループ広島がTPP視察団を組織し渡米した際、「大規模な直播栽培で高品質、多収量の米を生産している現場を見て、日本もこれに対抗する必要がある」との認識を共有したのも大きな要因になっているという。
 2つ目は、広島に鉄コ直播を導入しやすい基盤が整っていると考えたからだ。というのも、鉄コ直播で最大の課題となる苗立ち不良を防ぐためには、日本ではまだ一般的ではないレーザーレベラーを使った圃場の均平化や徹底した溝切り・落水管理などが必要だ。
 レーザーレベラーはアタッチメント式でも数百万円かかるほか、水管理にはさらなる人員も必要だ。こうした金銭的・人員的要因を考慮すると「導入のハードルは中小規模の生産者よりも集落営農の方が低い」。広島は県内に243の集落営農法人があり、全国でももっとも集落営農化が進んでいる地域だ。それゆえ、普及への期待値は高いという。

(写真)
鉄コ種子(上)と無処理種子。鉄コ種子の方が生育がいい。

 

◆東広島に研修拠点

鉄コ種子の作成過程を実習した。 集落営農への推進には「JA営農指導員の力が不可欠だ」(山内氏)。それでは、実際に生産現場を詳しく知るJA営農指導員はどう見ているのか。
 研修会に参加したJA職員からは「以前、直播に取り組んだが、うまくいかなかった。それに比べると技術も資材も格段にレベルアップしている印象で、魅力を感じる」と評価する声もあったが、「いくらで作れて、いくらで売れるのか。新たに必要となる人件費も含めて詳細なコスト試算を提示してほしい」、「コーティング種子を一カ所でまとめてつくってほしい。各JAで対応するのは難しいだろう」といった課題も出された。
 その一方で、「これからは“安い”という付加価値は評価される。それを、どう実売に結び付けるか」、「新しい技術の導入は難しい。十分な支援がほしい」と、全農の販売力・ニーズの掘り起こし、支援体制の整備を期待する声もあった。
 JA全農ひろしまが策定した鉄コ普及方針によると、26年産は全農本所営農販売企画部のパイロットJAにも指定されているJA広島北部を含めて、県内3?5カ所に1haほどの展示ほ場を設置し、収量や作業時間・コストの検証、JA営農指導員のスキルアップを図る。27年産では米産地があるすべてのJAに1カ所以上の試作ほ場を設置。28年産以降はJAを核に、集落営農法人への技術普及と資材の供給を本格化させ、将来的には県内水田面積の8%にあたる2000haの普及をめざす。この面積は、県内集落営農法人の耕作面積の3分の1に相当するという。
 3月には推進支援のための研修所をJA西日本営農技術センター内に設置する。JA全農ひろしまで鉄コを担当する資材農産部の中川晴之部長は、「(研修所を)県内だけでなく西日本全体の普及拠点にしたい」との考えだ。「2000haはかなり高い目標だと理解している。しかし、5年後10年後の販売環境を考えれば、この程度の面積を移植から直播に変換しなければならないだろう」と、その必要性を強調し、目標達成に意欲を燃やしていた。

(写真)
鉄コ種子の作成過程を実習した。


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