ラッカセイ祖先種のゲノムを解読 栽培種の品種改良効率化に期待2016年3月8日
(公財)かずさDNA研究所は、ブラジル、米国、中国、インドの研究機関と共同で、ラッカセイ祖先種のゲノムを解読した。今後の品種改良が短時間で行われるようになると期待されている。
ラッカセイは南米のアルゼンチンからボリビアのアンデス山脈が原産とされるマメ科の植物で、この地では紀元前から食べられていた記録が残されている。15世紀から17世紀の大航海時代に世界中に広がり、現在では、アジア、アフリカ、南米地域で広く栽培されている。タンパク質やオレイン酸やリノール酸などの脂質やビタミン類などが含まれていることから、これらの地域では主要作物の一つとなっているが、さび病、黒渋病、寄生性センチュウなどの病害虫被害が広がり収量が低下しており、これら病害虫に耐性をもつ品種が求められている。
しかし、現在栽培されているラッカセイは、一つの細胞の中に2種類のゲノム(AゲノムとBゲノム)を持つ異質四倍体で、遺伝的な多様性が小さく、似た形質をもつ品種が多く、従来法での育種は難しくなっており、ゲノムを用いた育種法の開発が待たれている。
これまでの研究で、原産地の近隣でみられる2種類の二倍体祖先種が、AゲノムとBゲノムの由来と考えられている。
同研究所らは、この2種類のラッカセイ祖先種のゲノムを解読することに成功した。そして、栽培種の収量低下の原因であるさび病や黒渋病などの病気、寄生性センチュウなどの害虫に抵抗性をもつ可能性のある、植物免疫にかかわる遺伝子を多数同定した。
解読された祖先種のゲノム情報を基に、現在の食用ラッカセイ栽培種のゲノム解読が加速され、その成果を育種に活かすことで、より栄養価の高い、病気に強い、味の良い品種を作ることができるようになる。
また、祖先種と栽培種の両方のゲノム情報を得ることができれば、栽培化によって失われた祖先種のもつ病気の抵抗性に関わる遺伝子などが特定できる可能性があり、新しい形質を栽培種に取り入れる品種改良が短期間でできるようになるとみられている。
(写真)ラッカセイ祖先種と栽培種のさやの写真:左上がAゲノム種、右上がBゲノム種、下が落花生栽培種。目盛りの感覚は1mm
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