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べんがらで被覆 省力・安価の水稲湛水直播2016年9月20日

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 農研機構九州沖縄農業研究センターは「水稲べんモリ湛水直播」を佐賀県と福岡県などで実施している。被覆しやすく、苗立ちにも効果がある。

 代かきした水田に播種する湛水直播ではこれまで、播種後に枯死する苗立ち不良がおきていた。対策として過酸化カルシウム粒剤を種子に被覆することで苗立ち向上を図っているが、手間とコストがかかる。また代かき後の水田の土壌中の酸素が不足し続けると、硫安などを含む硫酸イオンから有害な硫化物が生成され、苗立ちを阻害していることが分かっていた。
 「水稲べんモリ湛水直播」は、べんがら、三酸化モリブデン、ポリビニルアルコールを混合し、被覆した種子を使う。
 三酸化モリブデン(種子重の0.5%重)で硫化物の生成を抑制し、べんがら(種子重の0.1倍重、または0.3倍重)で沈みやすく水になじみやすくする。定着剤にポリビニルアルコール(べんがら重の1%重)を使う。べんがらの量を0.1倍重とすると資材費も安く被覆が容易。さらに0.3倍重では手間と資材費がかかるが、種子の重量が増すため播種しやすく、流亡しにくくなる。
 そのため、基本的に土壌中に播種するならば0.1倍重でよいが、種子を土壌中に埋没させることが難しい播種機や軽い乾燥した種子を使うときは0.3倍重をすすめている。

◆資材費安いが、ほ場に合わせた選択必要

 種子1kgあたり、鉄コーティングでは300円ほど費用がかかるのに対し、この手法は0.1倍重のとき約70円、0.3倍重のとき約200円で低コスト。またコーティングの手間も楽で、鉄コーティングは被覆後酸化させるために放熱しながら3日ほど朝夕に水をかける必要があるが、同手法は被覆して表面を乾かせばよい。
 ただし、同手法は硫化物以外の苗立ち阻害要因に効果はなく、また鉄コーティングと異なりスズメの食害を抑制できない。さらに他の方法と同じようにスクミリンゴガイの食害がある水田での実施は困難。
 そうした問題があっても、同機構はこの手法が従来より被覆が容易で安価に苗立ちを確保できる種子被覆法であるとしている。
8月に行った、この手法で播種した水田の視察では、前作が大豆の水田だと苗立ちが良好だったが、前作水稲では、一部の水田でスクミリンゴガイの食害が発生した。
 また直播だと過繁茂になりやすいので、播種量、施肥設計、中干しなどの栽培法を検討する必要がある等の意見があった。
 なお、この方法には農研機構が所有する特許を使っているため、実施には特許の利用許諾が必要。ただし製造する森下弁柄工業(株)はこの利用許諾を得ており、ここで製造した資材を使う場合は改めて利用許諾を得る必要がない。

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