直播栽培地帯で増加する雑草イネ 農水省 雑草防除対策フォーラム2016年12月16日
農水省は12月15日、同省講堂で「第22回 農作物防除フォーラム」を「総合的な雑草防除対策に向けた取り組みと課題」をテーマに開催。農薬メーカー、都道府県や市町村の防除担当者や関係団体など約250人が参加した。
同省担当者は「雑草防除をテーマにしたところ、多くの人にきていただいたことから、現場では厳しい状況にあるのではと受け止めた」と挨拶。除草剤が労働時間の短縮と収量向上の点で重要であることを述べた。
農研機構中央農業研究センターの小林浩幸雑草制御グループ長は1992年の主要雑草は在来品種が主だったが、現在は外来品種と難防除の在来品種に変化していると現状を報告。雑草分野の研究機関が少数のため、地域ごとの情報共有システムの構築が不可欠だと訴えた。
◆雑草イネ 世界的に発生面積拡大
同センターの内野彰上級研究員は雑草イネについてまとめた。
雑草イネはほ場に自生するイネで、自然脱粒し収穫物に赤米などとして混入する。放置すると年々増殖していき収量減の原因になる。新規需要米など前年作付品種のこぼれ籾に由来する漏生イネもあるがこれは時間経過とともに減少する。
混入した赤米は色彩選別機で除去するなど対策があるが、除草剤で雑草イネを防除することは困難である。水稲用除草剤は水稲に安全なため、除草効果がないからだ。手取り除草を行い、雑草イネをみつけたら株ごと抜き取る(識別が難しいが雑草イネは背の高いものが多い)などの方法があるが、実際に現場で行うことは難しい。
移植栽培だとある程度大きく育ったイネと雑草イネが混合したほ場で、除草剤を使い選別することができるが、直播栽培では難しい。雑草イネは直播栽培地帯で世界的に発生面積が拡大していると報告した。(雑草イネまん延防止マニュアル Ver.2のダウンロードはこちらから)
◆除草剤抵抗性雑草 総合防除技術
除草剤抵抗性雑草は抵抗性を持つ原因を(1)作用点変異、(2)非作用点変異の2つだと話し、抵抗性に効く除草剤が市場でも売られていることを取り上げ、複数回にわけてまく体系処理で対策が可能だと話した。
同機構九州沖縄農業研究センターの大段秀記上級研究員は除草剤抵抗性スズメノテッポウが、除草剤を適切に処理しても繁茂する現状と総合防除について話した。
除草剤抵抗性スズメノテッポウは(1)SU系除草剤だけに抵抗性、(2)ジニトロアニリン系除草剤だけに抵抗性、(3)両方に抵抗性をもつ3タイプがあり、抵抗性を前提とした除草剤が必要な状態だと分析。安定的に防除するためには耕種的防除と除草剤を組み合わせた総合防除技術が必要だとまとめた。
総合防除技術では(1)浅耕播種、不耕起播種、(2)麦の晩播、(3)大豆との輪作、(4)非選択性除草剤による播種前発生個体の徹底防除の4つの技術を効果的に組み合わせる方法を述べた。(麦の浅耕播種・不耕起播種を活用した除草剤抵抗性スズメノテッポウ総合防除マニュアルのダウンロードはこちらから)
このほか、薬用作物栽培の農薬適用拡大や除草剤開発の普及の現状などについて研究者から報告があった。
同省は平成7年から毎年1回、病害虫防除に関するテーマを設定し、先進的な取り組み事例や生産現場の諸課題を紹介している。
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