日本品種は独自のグループ 世界のダイコン500種のゲノム情報公開 東北大学など2020年3月30日
東北大学大学院農学研究科は、千葉県のかずさDNA研究所、農研機構と協力し、500以上ある世界各地のダイコン品種のDNAを分析、ゲノム情報の一つである染色体全体に渡って異なる部分(SNP:一塩基多型)を世界最大級の数で明らかにした。これにより、世界中に分布するダイコンは、栽培地域と関連して大きく4つのグループに分かれること、また、日本の品種は独自のグループを形成することが分かった。この成果により、膨大な品種間のSNP情報は、多様な特徴を決める遺伝子の同定やゲノム情報を利用した育種(品種開発)の加速につながると期待される。
ダイコンは世界で広く栽培されているアブラナ科の野菜。中でも日本では、各地で特徴的な地方品種が多く、一般的な青首ダイコンや白首ダイコンのほか、丸い形の「聖護院ダイコン」、直径30センチにもなる「桜島ダイコン」、細長く2メートル以上になる「守口ダイコン」、辛味の強い「辛味ダイコン」など、100を超える地方品種が知られているが、多様な特徴が遺伝的にどのように決まるのかほとんど分かっていない。
形や成分などの違いを決める遺伝子や品種間を特徴づける遺伝子を見出すには、多くのダイコン品種・系統間において異なる膨大なSNP(一塩基多型)を染色体の広範囲に渡って明らかにすることが必要。近年、次世代シーケンサー装置の登場とこれを利用した分析技術の発展により、迅速にゲノム情報を明らかにできるようになったことから、東北大学では、世界のダイコンを対象にゲノムワイドなSNP分析に着手した。
今回の研究では、世界各地で栽培されているダイコンの品種、野生系統や野生種を対象に、約500の品種・系統について染色体の約5万3000か所のSNPを明らかにした(図1)。検出した総SNP数は約2100万と世界最大。
この遺伝情報に基づいて系統解析を行った結果、約500品種・系統は地理的な分布に対応するように大きく4つのグループに分類され、日本の品種・系統は東アジア(中国・韓国)のグループとは異なり、独自のグループを形成することが分かった。(図2)。
また、日本のダイコンは、これまでは中国・韓国を経由して伝播したと考えられていたが、今回の解析から、南アジア・東南アジアを経由して南西諸島、南九州に伝播し、日本国内に広がったという新たな伝播経路の可能性が見出された。
今後は、品種・系統により様々な特徴を持つダイコンの遺伝子の探索が加速することに加え、ゲノム情報を利用した育種(品種開発)の加速につながることが期待される。
また、地方品種などの品種間の識別や、品種の同定を可能にする遺伝子情報を提供できたことから、SNP情報を使った識別・同定分析技術の開発が進むことが期待される。
さらに、100を超えると言われ日本の地方品種に、SNP情報を使うことで、地方品種の類縁関係の詳細が明らかになり、遺伝資源保全の指標づくりに情報が活用できると考えられる。
加えて、生物多様性条約の名古屋議定書により、現在は海外の国・地域の遺伝資源を入手することは難しくなっていることから、各国や地域において、そこに古くからあるダイコン品種・系統を本研究と同様の手順で分析し、本成果のデータと併せて解析することで、世界のダイコンの伝播経路がより正確に明らかになると考えられる。
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